第21章


[34] 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハクタイの洋館の一室。
「ちっ、うざってぇ」
ドンカラスが何やら不機嫌そうな顔をして、窓の枠に頬杖をついて外を眺めている。
その見つめる先には桜が綺麗に咲いていた。ハクタイの森にも春がやって来たのだ。
ドンカラスは決して桜が嫌いなわけではない。むしろ毎年、花が咲くのを楽しみにしている程だ(楽しみにしているのは花ではなく、花見の宴会で出る豪華な料理と酒の方だという噂だが)。
機嫌が悪い理由は桜の木の下にあった。

「今日は森が騒がしいポ……ゴホン」
外を見るドンカラスの後ろでエンペルトが浮かない顔をしてぼやく。
桜の木の周りにはビニールシートが敷かれ、その上では人間達が好き勝手に騒ぎ宴会をしていた。

「去年迄はこんなんじゃ無かったってえのに……カーッ、人間め!余計な事してくれやがりやした」
ドンカラスは腹立たしそうに觜を歪め、窓枠を叩く。
去年までは花が咲く季節でも、窓から見えるあの辺りは人間は来ず静かなものだった。
ドンカラスは毎年そこにヤミカラスを引きつれ、花見の宴会を楽しんでいたのだ。
だが、今年はあの賑わいよう。原因は雑誌に『花見の穴場スポット』としてあの場所が紹介され、人間達に穴場を知られた事にあった。

「用意した料理とお酒――どうする?」
エンペルトが恐る恐る機嫌の悪いドンカラスに尋ねる。
「勿体ねえ、あっしらで何とか相応の手段で処理――」
「おーい、ドンーッ!」
そんな時、エントランスホールの方からビッパの何時もの嬉しそうな呼び声が聞こえた。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.