第20章


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「……あれでは長くは耐えられんぞ」
 ボーマンダは先程から黙りこくっているミロカロスに、鎌をかけるように話す。
「何のことでしょう?」
 眉一つ動かさず、冷静に返すミロカロス。
 だが、ボーマンダは、創造神アルセウスに時の神ディアルガとして創り出されてから、何千、何億――
数えたら気が遠くなるような時間を、共に創り出された空間の神パルキアと過ごしてきた。何かを偽っているときのパルキア――ミロカロスの癖は、とうの昔に見抜いている。
 ミロカロスの尾の先が、時計回りで二回くるりと宙に円を描いたのを、ボーマンダは見逃さなかった。
「とぼけるな。石板を持たせたあの猫の事だ」

 しばらく沈黙した後、ミロカロスは小さなため息をもらす。
「嫌ですねえ。気付いていたか、ディアルガ」
「当然だ。」
「あの猫はやるべきことは既に果たしました。どの道、主が復活なされた後、何らかの処置をとらねばなりません。あのまま無理な力を使わせ続け、勝手に自滅してもらえれば、我らの手間が省けるではないですか。」
 冷徹にミロカロスは言い放つ。
 ボーマンダはもう何も言わなかった。ミロカロスの性格も、ボーマンダはとうの昔に分かっている。
「ただ……あのお人好しそうな魂が乗り移った鼠が傍にいます。早々うまく猫を自滅させてはくれないでしょうね。」
 ミロカロスは「ああ、嫌ですわ」と、わざとらしく大きなため息をつく。そのを様子を見て、ボーマンダはフッ、と薄く笑みを浮かべた。
 ボーマンダは分かっていた。氷のように冷たく、冷酷だったミロカロスの心が、ピカチュウ達と接するようになってから少しずつ変わり始めていることも――




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