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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[01]８月３日(銀時)

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｢お～ヨシヨシ。

お前は本っっっ当、かわいいでちゅね～。

大きくなっても、飯を炊飯器ごとかっ喰らったりとか、アイドルオタクになっちまったりとか、朝からヘッドバット喰らわしたりとか、しちゃダメでちゅよォ～。｣

腕の中の我が子、金太郎は、俺の着物を強く掴んだまま眠っている。

｢もう寝たんだから、布団に置きなさいよ！｣

と嫁さんは言うが、この柔らかさと温かさをなかなか手離す事が出来ず、つい抱いたまま家中をウロウロしている。

俺の遺伝子を丸々引き継いでしまった金太郎は、やはり俺と同じく銀髪で、死んだ魚の目でガンたれる、少々可愛げのない赤ん坊だが、俺にとっては他の何者にも変え難い、唯一無二の存在だ。

｢抱き癖が付いたら困るでしょ。

明日から仕事に連れて行かなくちゃいけないんだからね。

早く寝せちゃってよ！｣

産後一ヶ月間の産休を取り、明日から華蓮は職場復帰を果たす。

当初、復帰にあたり屯所に託児所設置をしてくれると約束していたのだが、警察庁長官の…何だっけ、何とか言うオッサン…松平だっけか？アイツの、

｢いいじゃん、そんだけ人数いるんだから、みんなで順番に面倒見りゃあよぅ。｣

という一言で、託児所設置の話はお流れになってしまった。

｢もぅ、早く布団に寝かせてちょうだい！

抱き癖が付いたら、困るのは職場のみんななんだからね。｣

だんだんと華蓮のキレポイントに火が着きそうな予感がし、俺はそそくさと金太郎を布団に寝かせた。

赤ん坊は、完全に眠っていたとしても、気を抜けない。

布団の上に下ろし、抱いていた手を尻と頭から引き抜くときも、丁寧かつ俊敏に行わないと、赤ん坊に感付かれ、泣いて目を覚ましてしまう。

そして赤ん坊を無事寝かせたとしても、そこでまだ気を緩めてはならない。手を無事引き抜いてその場から去ろうとした際に、ペキッと脚が鳴り、起きてしまう事だってあるからだ。

たかが赤ん坊、されど赤ん坊。

寝かせるのにも、細心の注意とテクを必要とするのだ。

｢よーし、いいだろう。｣

完璧な技でもって金太郎を寝かせた俺は、安堵の溜め息をついた。

さて、さっきたらふく乳を飲んだから、これから裕に二時間は眠るだろう。

その間ジャンプ読みながら、いちご牛乳でも…

その時だった。

俺の金太郎の眠りを妨げる、悪の輩がやって来たのは！

ピンポ～ン♪

｢坂田さ～ん、黒犬ヤマトですがー。お届け物でーす。｣

金太郎は、奴の無節操なまでの叫びに、怒りを表すかのようなけたたましい声で泣き出した。

俺は、かわいい金太郎の代弁を果たすべく、玄関へ走った。

｢うっせェェェ～！！

そんな声出したから見ろ、うちの赤ん坊が目ェ覚まして泣き出したろーが、コンチクショー！！

お前も同じくらい泣かせてやろーか、アァン！？｣

鬼の形相で詰め寄る俺に、宅配業者は泣きそうな顔で荷物を差し出し、慌てて玄関を飛び出した。

荷物は、縦･横･高さと１メートルずつはあろうかという大きな箱だった。

これは例によって、おそらくアイツだろう。

配達票には【坂田金時様　　　坂本辰馬】とあった。

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【拝啓　(てゆーか拝啓って何？)

金時君、御息女誕生おめでとう！

金時がお父さんって、何か大丈夫？って感じだね(笑)

コレは、巨大生物の沢山いる星から仕入れてきたベビーシートです。

お座りが出来るようになったら、チャイルドシートにもなります。

おたくのでっかい白犬に乗せてね。

坂本辰馬】

…まーた間違いだらけだよ。

俺の名前は《金時》ではなく《銀時》だし、赤ん坊は《御息女》ではなく《御子息》だ。

｢お前、一体何年の付き合いだ。

まったく…｣

そう呟きながらも箱を開ける。

すると、中にはしっかりと固定出来そうな頑丈なベルトの付いた、真っ赤なベビーシートが入っていた。

布団の上でギャアギャアと泣き叫ぶ我が子の為に、俺は急いでそれを定春に背負わせた。

｢よーしよしよしよし…

ほ～ら、ばっちりセッティング出来まちたよ～。

さぁ、定ちゃんの背中にノンノノンノちよーねぇ！｣

早速そのベビーシートに乗せ、腹と肩にベルトを掛けてやると、金太郎は途端に泣き止んだ。

すると定春は、ご機嫌を損ねないようゆっくりと立ち上がり、玄関に向かってソロリソロリと歩き出した。

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１０分ばかり経った頃、金太郎を背に乗せた定春が、外から帰って来た。

側に駆け寄り顔を覗き込むと、ベビーシートに包まれた金太郎は、再びスースーと眠りに就いていた。

明日からはコレに乗って、華蓮と出勤する。

金太郎のぐっすり眠る顔を見て、明日からの生活の心配は吹き飛んだ。

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