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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[20]１月５日

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真選組女子隊設置発表記者会見に出席する前に、ミツバちゃんのお墓参りに行く。

本来沖田家の菩提寺は田舎にあるらしいのだが、｢自分の側がいい｣という総悟君の意向で近くのお寺の墓地に葬ったのだ。

ヘドロさんの花屋で買った淡いピンクの花束と水桶を持ち、ミツバちゃんの元へ向かう。

空はイマイチ薄曇りで、早朝という事もあり寒さが身に染みる。

玉砂利を踏みしめながら進むと、ミツバちゃんのお墓の前に栗色の髪の青年が見えた。

総悟君だ。

｢姉さん、今日はついに姉さんが夢見ていた女子隊設置発表の日ですぜぃ。

姉さんが生きていて丈夫な身体なら、飛び付いて応募した事でしょうねぃ。

まぁ今更そんな事言ったって…ねぃ。

華蓮さんは気合い入れる為に、昨日髪切っちまいやがったんでさぁ。

姉さんから『華蓮ちゃんのココ一番！！って時に渡して』って託されたコレ、意味無くなっちまいやしたよ。

さぁて、次の『ココ一番！！』はいつなんですかねぃ…。｣

手のひらにはラインストーンで彩られたコンコルドクリップが乗せられていた。

｢大丈夫。
それ今ちょうだい。｣

突然の私の登場に驚いた様子の総悟君だったが、目の前に差し出された私の手にコンコルドクリップを乗せた。

｢そんな短い髪で、どうやってコレを留めるつもりですかぃ？｣

意地悪そうな上目遣いで言う彼を前に、私は黙って胸ポケットの口に挟み込んだ。

｢なるほど

髪じゃなくそこに留めるんですかぃ。

さすが女子隊長、一筋縄にはいきやせんねぃ。｣

ニヤリと笑いながら彼は水桶を手に歩き出した。

この日以来、【百華】と共に胸の華やかなコンコルドクリップが私のトレードマークとなった。

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｢それではこれより、武装警察真選組、女子隊設置発表記者会見を行います。｣

ホテルニューオータラの大広間には、報道陣のテレビカメラや記者団が処狭しとひしめいている。

時折光るフラッシュが眩しい。

昨日髪結処で勧められて購入したハイビジョン放送向けファンデーションは効果を発揮しているだろうか。

雛壇には松平片栗虎氏と近藤局長と私の三人が座っている。

本来なら副長の土方さんも出席するべきなのだろうが、あんな男前が公共の電波に乗った日にゃあ、それ目当ての女子隊員応募者が殺到し、混乱する事は必至だ。
だから私自ら丁重に御辞退願った。

｢えーっ、俺は！？
俺は出席して良いワケ！？
出席して問題ないワケ！？｣

と当然局長は騒いだが、一発腹を殴ったら黙った。

｢それでは女子隊長の御挨拶です｣

司会者に促され、席を立つ。
会場の視線がこちらに集中する。

｢真選組女子隊　隊長を務めます

山田華蓮です。

男性上位の現場で女という立場に屈する事なく、また女という名に恥じる事のない、そんな隊を築いていきます。｣

胸のコンコルドクリップが、キラキラとフラッシュに反射していた。

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夜

記者会見後に一旦屯所に帰り、一通り仕事を終え、帰宅しようと立ち上がって廊下に出たところで誰かに呼び止められた。

近藤さんと土方さんと総悟君だった。

｢華蓮さん、今から帰るんでしょ。
これから誰かと先約ある？｣

無いと分かって私に聞いたとすれば、打ち首獄門だ。

｢じゃあ一杯どう？

女子隊設置祝いだよ！｣

自分の祝い事を喜ぶかのような笑顔で誘ってくれる近藤さんに、例のマニュアル通りの返事をする。

｢ご馳走になります｣

まだ私にもこのテは使えるらしい。

ただし、若い女子隊士が入って来るまでの短い命だがな…。

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｢固めの盃だ、受けろ。｣

おちょこに酒を並々と注ぎ、土方さんがニヤリと笑う。

｢…よし、これで俺達は兄妹だな。｣

この人、任侠映画の見過ぎだと思う。

あ、感極まって泣き出した。

土方さんの言う通り、主要幹部達も隊士も、兄妹や家族みたいな仲で仕事するんだろうな。

しばらく味わった事の無い、人の温かさを感じた。

これからもよろしくお願いいたします。

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