第一章


[06]嘆息


「パパ、どうして呼んでるの?」由斗は神社の敷地に住み、純和風の家や部屋で暮らしているのになぜか父親のことをパパと呼ぶ


「分からないわ、けれど、別にたいしたことではないでしょうから早く行ってらっしゃい」一はクスリと笑いながら言う
この神社で巫女をしているからなのか、一は笑むとなぜか神々しい


「わかった、けど私今着替え中…、(それに面倒くさいし、だってパパの部屋、神殿の向こう側なんだもん)」
「大丈夫です誰も気にしませんよ、あなたのことですものみんな慣れっこだわ、浴衣だけ羽織っていきなさい」


言い淀んだ由斗に一は笑いながら言う
「うぐぐっ……」少しはおとなしく生活しておけばよかったなぁと由斗は嘆息した


なぜなら小さな頃から由斗はおてんばだったからだ
成長してもう幼くはないのだから、『面倒くさいから』なんて言うことは出来ない
普段から、もう少し落ち着いた生活をしていれば、さっきの言い訳も通じたかもしれないのにと思うと由斗は改めてため息をつきたくなったのだった


ちなみに「面倒くさくってもです」一はちゃんと見通していた
そう言われた由斗が見透かされていた!と心の臓をドッキーンとさせたことは言うまでもない





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