バイバイ(更新中)


[10]再開


カシャン

目覚めて一番最初に聞いた音は耳障りな金属音だった。
聞き慣れている音ではあったけど、聞こえるはずのない音…

だって…彼を解放したはずだから…


「あ、目が覚めましたか。どこか痛んだりはしませんか」


慇懃無礼な声は、聞きなれた彼のもの。
解放したはずの金で買った男のもの…


カシャン
ガシャっガシャ!


動こうとすると足首と手首に痛みが走る。
見なくても、それが彼に使っていた皮の手錠だということはわかる。

どうして?
最後の乾杯をしてから…
してから…?


「よっぽど疲れてたんですね。もう、朝ですよ?」

「え?朝?」

「はい。今、8時くらいですね。昨日は夜勤明けで今日はお休みでしょう?」



「桜木 愛美、先生?」

「…」


彼が紡いだ言葉に私は血の気が引くのを感じた。
偽名ではなく本名を呼ばれたから…


「ああ、安心してください。貴女が男を買っていたなんて言いふらしたり、まして脅したりはしませんよ」

「じゃあ、どうして!っ…ん…んぅ」


どうして…
何のためにこんなことを?


私からしていた時とはまるで違う貪るような長い口付けは、どこか優しくて…切なかった。
心臓を鷲掴みにされたような不思議な感覚が、長く残って消えてくれない。




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