黒猫の君と白猫の僕(君と私番外編/完結)


[11]動物病院の兄妹


「あー!昨日の!!」

その女の子は、僕を指差すと大声で叫んだ。


「真琴…、大声を出さないで。子猫がびっくりしちゃったよ」
「ごめんなさい」


獣医さんは、親しげな様子で彼女を諭した。
彼女もしゅんとした様子で謝った。

そして、僕の方に視線を移した。
顔はニコニコしていて、嬉しそうだった。


「飼えるようになったんだ、よかったね」
「うん。昨日、お父さんに言ってみたんだ」
「そっか。頑張ったんだね」
「…う、うん…」


なんだか恥ずかしくなって、うまく答えることができなかった。
そんな僕を見て獣医さんはクスリと笑うと、その女の子の方を向いた。


「真琴、診察はもうすぐ終わるから、うちで待っててくれる?すぐ行くから…お母さんにも言っておいて」
「うん、お兄ちゃん。おうちで待ってるね」


彼女は少しはにかんだような笑顔を浮かべると、手を振って診察室から出て行った。
彼女が出て行ったことを確認すると、獣医さんは僕たちに頭を下げた。

「すみません、お騒がせしました。僕の妹なんです。困らせて、ごめんね」


獣医さんは僕にそう言って謝ってくれた。
困ってたわけじゃないんだけどなぁ…


「あ…、困ってはない…です。なんだか、恥ずかしかったんです…その、ごめんなさい」
「いやいや、急に来たからびっくりするよね。気にしないで。嫌じゃなかったら、この子の予防接種のときにでもまた来てよ」


獣医さんは気さくに笑っていた。
その笑顔が…なんとなくあの子に似てた。


本当に兄妹なんだ…って思った。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.