黒猫の君と白猫の僕(君と私番外編/完結)


[01]思い出の場所で


この公園のベンチで、君ははにかむように微笑んで少し赤い顔でこう囁いた。
「ねぇ、ここでキスして?」
言ってすぐに、閉ざされる大きな瞳。僕は、君の頬にそっと手を添えて、唇が触れるだけの軽いキスをする。
君が望むのなら、そんなキスも悪くない。

まぶたさえも赤く染めて、照れる君は本当にかわいらしかった。

「好きだよ、まこちゃん」
呟いて、軽いキスをもう一度。

「もう、ずっと前から」
吐息と一緒に吐き出した、本当の気持ち。
「え?」
君は不思議そうな顔をして、僕の顔をじっとみつめる。
「なんでもないよ?」
「ひめ…ん…っは……んぅ」
追求されるのが怖くて、君の言葉を奪ってしまう。
息をすることさえも許さない、深いキス。
ごまかすには、これが一番。君は、何もかもを認識できなくなってしまうみたいだから…


ねぇ、どうか、聞かないで。
ずっと前がいつかなんて…
思い出はとても甘くて、とても残酷だから。

僕だけが覚えてる、二人の初めての出会い。君は忘れてしまってるんだね。

この公園のそのベンチに座っても、君は何も気づかない。

わがままを言ってもいい?
できることなら、君も思い出して?
二人の出会いを。
君が僕を捕らえた日のことを…



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