I love my butler.


[03]無題


まずは、パーティー用の衣装のチェック。

用意されたドレスは淡い紫色でシンプルなデザイン。
それに合わせて用意されたアクセサリーは、パールとアメジスト。
足元は白のハイヒール。
紫と白で統一されたパーティーの衣装…
今までにない組み合わせで、戸惑ってしまう。


「碧様、いかがですか?」


メイド長が衣装を掲げながら訊いてきた。
悪くはないけど…
似合うのかしら…


こんな色は着たことがないから、不安だ。


「今までにない色ね…」
「お気に召しませんか…」


静かな声でメイド長が尋ねた。
どんよりとした雰囲気が広がり始める…

こういう雰囲気は気まずくて、嫌い。


「そんなことはないのよ。ただ、初めての色だから戸惑ってしまったの…」
「お似合いになりますよ。今日で18歳におなりになりましたから、このようなお色もよろしいかと…」


気まずい空気の中、正直に呟いた。
そんな私が不安気に見えたのか、メイド長は表情を少しだけ柔らかくした。
仕事に徹した彼女にしては、なかなかに珍しいことだ。
それだけ弱々しく見えたのだろうか…

「まずはお体から整えましょう」

メイド長は表情をいつもの堅いものに戻して、淡々と言った。

「……わかったわ…」

返事を聞く前にバスルームへの扉は開かれ、メイド達がそそくさと準備を始めた。

これから怒涛のケアタイムが始まる。



一人でゆっくりできたのはお風呂の中までだった。あがった途端にボディケアの嵐。全身をアロマオイルでマッサージ。顔やデコルテには美白ケア…
最高の技術が施され、土台が仕上がった。

次はメイクだ…


されるがままに顔や髪の毛を弄れる。
あまり気持ちのいいものではないけど、逆らっても同じだし何も言わない。

諦めの境地だ…

それに彼らの腕は知っているから…




「まあまあ、碧様お綺麗ですわ」


メイド長が満面の笑みを浮かべて、賞賛した。他のメイド達もにこやかに微笑んでいた。

なんだか…こそばゆい。

鏡に映し出された私は、普段の私とあまりにも違っていたから…


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