I love my butler.


[02]不快な朝


清々しい朝が、いつものようにやってきた。
朝の目覚めは紅茶の香りでうながされる…ハズだった。


でも、今日は違うみたい。
今、私を起こそうとするのは…

「…様。碧様。起きてくださいまし。み ど り さ ま !」
いとしい彼の低い声ではなく、甲高いメイド長の声を朝一番に耳にした。
とっても不愉快だ。
朝一番に聞くのは、聞きたいのはこの声じゃない。
私を起こていいのは彼だけのはずなのに…




「何事なの?朝から騒々しい。沢木はどうしたの?」
怒りを隠そうともせずに、私はメイド長を睨みつけた。
さすがはメイド長。私が渾身のにらみを効かせても、どこ吹く風といった感じだった。

なんか、ムカつく…

「申し訳ございません。本日は碧様のお誕生日パーティでございますゆえ、沢木さんはパーティの準備で本館の方に行かれております。ですから、私が参りました」
メイド長は飄々と用件と私の問いかけへの答えを言った。

反論できない…
する必要もないけど…

「…そう、わかったわ」
不機嫌な声を出して、答えた。
彼女に恨みはないけれど沢木ではないという、ただそれだけのことが私を苛々させた。
ただでさえパーティと耳にするだけでもめんどくさいのに、その事実が私を思った以上に苦しめた。



「碧様、朝食はどうなさいますか?お召し上がりになられますか」
「ええ、いただくわ。パーティではあまりいただけないから…」




私の答えで、すぐに部屋に朝食が運ばれてきた。
メニューはクロワッサンとサラダとオムレツとスープだった。
食後には温かい紅茶が出された。

沢木が入れてくれる紅茶と比べると、やはりおいしくなかった。
まずくはないのだけれど…


「ごちそう様。今日の朝食もおいしかったわ。料理長に伝えておいて」
「かしこまりました」
メイドの一人が一礼をして、部屋を出た。
もちろん、食器をのせたワゴンを押して。




「さあ、碧様お食事もお済みになられたことですし、今宵の準備を始めましょうか」
メイド長がにっこりと笑いながら、私に戦が始まることを宣言した。










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