本編「〓Taboo〓〜タブー〜」@


[12]chapter:3-3


怪物が身構えるのと同時にラルは横に飛んだ。
怪物はラルに顔を向け、稲妻のような雄叫びをあげた。
 
まずはこの怪物をシリウスから遠ざける。
ラルは最初にとるべき行動をそう判断した。
 
恐怖はなかった。だがまだ勝機もあるわけではなかった。
この怪物の身体能力及び他の能力が未知数であったからである。
 
ラルは剣に左手も添え、両手で構えた。
 
怪物はラルの方だけを向きジリジリと地面に爪をたてていた。
どうやらラルの思惑通りシリウスへの意識をそらすことができたようだ。
 
互いに相手の出方を伺ってるようにも見える間があいた。
ラルの剣先は微動だにせず怪物の方を向いている。
 
 
突然怪物が跳ね上がった。
ラルの頭上に怪物の右前足が迫る。
ラルは体をひねり前足の攻撃をよけると同時に剣を横一線に薙いだ。
 
剣が怪物の足に食い込み、赤い鮮血が飛ぶ。
 
──硬い……!!
 
剣は怪物の足を通り過ぎることなく3分の1ほどで止まっていた。
 
「グルゥゥゥァァアアア!!!!」
ラルは頭上に悪寒が走るのと同時に剣を無理やり足から引き抜き後ろに跳んだ。
すれ違い様に、先ほどまでラルがいた場所に怪物の牙が咬みあわさる。
 
1秒でも引くのが遅れたら、ラルはあの牙の餌食になっていたろう。
 
ラルはすぐに構え直した。剣を前に向けながらシリウスのいた方を見るとそこに彼の姿はなかった。
 
──無事逃げられたか……
 
ラルは剣を左下に構え、身を低くした。
 
──思った以上に..いや、想定外に奴の肉は硬い…。だが動きはそんなに速くないようだ。あれなら避けられないことはない…。ちまちま攻撃しても奴は倒れんだろう………ならば…。
 
ラルは剣を握る手に力を込めた。
 
──急所狙い…!!
 
「グルルルル…」
怪物は静かに唸った。大きな目を細め、牙を口から少し見せながらラルを睨んでいる。
 
──奴が動き出すまで待つ…!奴の動き始めは分かりやすい…そこを避けて剣を……
 
カッ!!
 
いきなりだった。
白い光が闇を裂き、ラルの目の前に飛んできた。
「なに!?」
 
白い光ははじけると同時に地面が吹き飛んだ。
 
ラルは横に跳んだ。ラルの軍としての勘が幸いし寸前で光の爆発をよけれたのであった。
それでも爆発の勢いは凄まじく、ラルは上手く着地出来ずに地面に叩きつけられた。
 
「う..ぐっ...!」
ラルはすぐに身を起こした。
 
──なんだ…いまのは?
 
ラルは怪物の方を見ると怪物の口からは眩い光が溢れていた。
 
奴が飛ばした。
ラルはそうとしか考えられなかった。
 
「くっ...!」
ラルは左脇腹に激痛を感じた。どうやらさっき地面に叩きつけられた時に負傷したしい。
 
ラルは剣をなんとか持ち上げた。
 
──くそ…!侮った…!他の能力を警戒していたはずっだったのに…!身体能力だけで奴の弱点と勘違いしてしまうとは…!
 
ラルは自分の不甲斐なさに落胆した。
だがラルの目から光は消えていなかった。
 
──光の攻撃は速い…。奴がどう攻撃したかも見えなかった…。だがそれでもまだ避けられる…!
 
ラルは一呼吸置いた。神経を集中させ脇腹の痛みを和らげる。
 
 
 
行く──!!!
 
ラルは剣を下に構え怪物の方へ走り出した。
怪物はラルを睨みつけた。
 
ラルの目に怪物が口を少し開くのが見えた。
 
──来る!!
 
 
 
キィィン!!!!
 
 
 
暗闇の中に鋭い音が響きわたった。
ラルの剣は怪物に向けられず、後ろに構えられていた。
そしてその剣の先にに立つ人物が一人。
 
 
 
 
「……やはり…あなたが…」
「これを防ぐなんて…さすがだな…」
 
ラルの剣の先には、同じく剣を構えるシリウスの姿があった。
 
「何故…あなたが…シリウスさん…」
「シリウスぅ?あぁ俺の本名だっけか?」
「…!!」
 
シリウスは、今までの顔からは考えられないほどの笑みを浮かべて言い放った。
 
「シリウス・シルウァヌスじゃねぇよ………俺の名は…『シン』!!」
 
 
chapter:3 禁忌の夜のはじまり
 
 
〜to be continued...

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