☆幕末人と暮らす方法☆【完結】


[10]【第10話】妻ですから


 私は今、馬に乗ってます。

 馬って乗ると意外に高くて、ちょっと怖いかも。



 でも大丈夫。
 手綱を握る、歳三が一緒だから。



 「時間管理局の人がね、お金を置いてったの。口止め料ですって。
 私、そんなのいらない!って、しばらく泣きじゃくってたわ。そんなのより、歳三を返して!!ってね。
 でもね、私、ネットで調べたの。
 そしたらね、そのもらったお金、[過去見学ツアー]の旅費と全く同額だったの!!ね、ね、すごくない!?
 だからね、すぐに申し込みしちゃった。
 『明治2年5月11日行き』ってさ。」



 「そうか。お前は知ってるんだよな、[未来の人]だから。
 今日が何の日か…」



 「えぇ、そうよ。知ってて来ちゃった。」



 「馬鹿だなぁ…ホントに馬鹿だよ、お前は…」



 「だって、あなた言ったじゃない。『俺を置いていかないでくれ、ずっとずっとそばにいてくれ』って。」



 「あぁ、言ったさ。だが、まさか一本木関門に付いて来るとはな…。」



 「今日で歴史が変わっちゃうわね。
 『土方歳三、一本木関門にて謎の女と共に銃で撃たれ、死す』ってね。」



 「いや、違うな。
 『土方歳三、一本木関門にて妻と共に銃で撃たれ、死す』だな。」




 馬上で互いの唇を重ね、目で言葉を交わした。



 
 「ヒヒヒーン!!」




 鞭の音と共に馬が嘶き、一本木関門めがけて全力で走り出した。




 「我こそは新選組副長 土方歳三である。
 妻 土方牡丹とともに参上つかまつった。
 命が惜しくば、道を開けよ!!」




 2発の銃声は、北の海に遠く響き渡った。



〜END〜
 

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