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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[21]12月24日(長谷川)

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「えっ長谷川サン、また職失っちゃったの！？

おまけにアパートも引き払っちゃって寝るとこない！？

あーそりゃいけねぇな。じゃあウチ行こう、ウチ！そんでもう一回飲み直そうぜ！！」

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安い酒に悪酔いし、たまたま飲み屋で鉢合った銀さんの誘いについつい乗ってしまった。

夜分遅くによそのうちにお邪魔する事に多少の躊躇はしたが、酒の勢いと崖っぷちの現実に背中を押されて、結局奴について来てた。

銀さんは酔っ払って気持ち良いのか、道中ずーっと家族の自慢話をしていた。

元ミス大江戸小町の美人な嫁さん

かわいい息子

妹のような娘のような存在の神楽ちゃん

賢い助手の新八くん

みんなの話をする銀さんは、まさに夢見心地の顔だった。

俺ももうちっとマシな人生歩んでりゃ、嫁さんとこんな家族を築けたのかな…

「長谷川サン、ココだココ。

さぁ遠慮なく上がってくれよな。

ただいまー！」

銀さんが自宅の引き戸を勢い良く開けた。

すると奥から、風呂上がりの奥さんがツカツカと玄関先までやって来た。

おぉ、さすが元ミス大江戸小町。スッピンでも整った顔立ちをしている。

確か先程の話では、奥さんの華蓮さんはいつも玄関に三つ指をついて銀さんを迎えるらしい。

今時なんて古風な嫁さん…

「なーにが『ただいまー』だコルァ！

今一体何時だと思ってんだよ、アァ！？」

そう言うなり彼女は生乾きの髪を振り乱し、銀さんの頭を踏みつけ、玄関にねじ伏せた。

「あっ…す…す…すいまっせーん！！」

…アレ？つーか奥さん、三つ指ついてなくね？

それどころかどっちかっつーと銀さんが三つ指ついてね？？

―・―・―・―・―・―

「あらあら、お客様がいらしてるのにお恥ずかしいわ。

アナタもそれならそうと、電話の一本もかけてくださればいいのに。

そうすればお食事だってもう少しマシなものを御用意したのにね。

ほほほほほ…」

テーブルには、大盛りのごはんと魚の煮付けと味噌汁とタクアンが並べられていた。

「本当は銀ちゃんが『今日はクリスマスイブだから、みんなでバトルロイヤルホスト行こう！』って言ったから、私達おとなしくうちで待機してたアルよ。

ところが待てど暮らせど帰って来ないから、仕方無くうちにあったあり合わせの食材でこんだけ作ったネ。

マダオの食事なんか、端っから用意してなかったヨ。」

神楽ちゃんは溜め息をつきながら、同時に悪態をついた。

なるほど、そういう訳だったのか。

だから俺の茶碗は仏様のごはんみたいな量なのか。

銀さんに至ってはごはんが仏様な上に、魚がニボシだ。

しかも味噌汁のダシを取った後の、カスカスになった奴だ。

そうか。招かれざる客な訳だ、俺は…

つーか銀さん言ってたよね？

『うちの嫁さん、フランス料理しか作んない』

ってさっき言ってたよね？

味噌汁はフランス料理じゃねーだろ。

「メニュー内容や量に文句があっても受け付けませんよ、長谷川さん。

大体クリスマスイブの真夜中に、手ぶらでやって来てごはん食べてるなんて、大の大人が情けないとは思わないんですか。

直接面識の無い爺さんであるサンタクロースだって、よそのお宅にプレゼント持ってお邪魔してる日だってのに。

非常識ですよ、ったく…」

新八くんはメガネの奥から俺を心底軽蔑した。

食卓は、クリスマスイブだというのにこれ以上ないくらいの盛り下がり様だ。

銀さんの嘘つき。

『帰ったらパーティーの用意してある』

っつってたじゃん！

『神楽も新八も金太郎も大はしゃぎ』

っつってたじゃん！！

「いやァ～みんなスマンスマン。

ファミレス行く約束、すっかり忘れてたわ。

でも忘れてないよ、パパあれだけは忘れてないからね！

ほぉ～らみんな、プレゼントだよぉ～！！」

酷く荒れた空気を察したのか、銀さんは家族に何かを差し出した。

飲み屋のカウンターにあったチョコレート４つ…

「ケンカしちゃダメだぞぉ～！

みんなで分け合って食べ…

うぉぶッッッ！！」

銀さんのお望み通り家族の心は一丸となり、銀さんをフルボッコにした。
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