Expectation chart in the future〜Awoke from the dream 夢から醒めた b〜
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* * *
「あっ、波音!」
「莉菜ちゃん!!」
休憩室をあとにした波音は、人気のない廊下で、偶然親友の莉菜に会った。
波音は笑顔で駆け寄る。
「こんなトコで会うなんて珍しいね。‥まぁ、毎日1組の教室で顔会わせてるけどさ。」
「ふふっ、そうですね。
私はですねー、今さっき冬獅郎くんにお会いしてたのです。」
波音は日番谷に了承をもらい、1番仲の良い莉菜にだけは、彼と付き合ってることを話したのだ。
そのため莉菜は、波音にとって良き理解者である。
「よかったじゃん。一次受かったことも報告したんでしょ?」
「はいっ!すごく喜んでくださって、頭を撫でたり、…き、キスしてくださって…」
「へぇ‥?」
「それでですね、『十番隊で待ってる』と言ってくださったのです!本当に優しくて、ステキな方なのですっ♪」
「…じゃ、波音はもう進路決まるんだね。」
明るい莉菜の声音と瞳に、影が宿った。
さみしそうである。
その様子を悟り、波音が顔と手を横に振った。
「そんな、二次が受かればの話ですよ!?」
「けどさ、波音は優秀だし感じもいいから、きっと受かるよ。
…いいよね。あたしなんて未だにやりたいことも、進路もハッキリしてないもん。
……きっと、波音とは離ればなれになっちゃうしさ。」
「では、こうしませんか?」
「え?」
キーンコーン、カーンコーン……
昼休みが終わりに近づき、予鈴が学校内に響き渡った。
しかし莉菜の耳には、波音の声が確かに聞こえて、届いていた。
「…オッケー、忘れないでおくよ。あたしもがんばらなくちゃ。」
「はい、そうこなくっちゃです!」
「へへ。‥あっ!!次の教室って第4音楽室じゃん!?」
「大変です、急がないと‥」
「早歩き出来る?」
「はい、大丈夫です。」
「よし、行こう!」
二人は、やわらかな光が差しこむ廊下を歩き出した。
時折、たわいもない会話をこぼしながら。
しかし。
波音が日番谷の話をする度に、莉菜の笑顔が微かにくすんでいくことに、
波音は気付けなかった。─
* * *
その日、波音は夢を見た。
薄暗い空間に、女の子が一人佇んでいる夢。
ひじ近くまで伸ばした青色の髪がさらさらとなびき、
大きくて気の強そうな藍色の瞳がじっとこちらを見つめていた。
まばたきを何秒か置きにしながら、視線は逸らさない。
その瞳で、自分に何かを伝えようとしているかのように。
─ 夢‥?それとも現実?
夢の中でそう思ってしまうほどに、少女の色がくっきりしている。
『………っ。』
うつむき気味に、少女は唇を動かした。
しかし、何と言ってるのか聞き取れない。
─ お願い、もう1度。もう1度、おっしゃってください。
波音は少女の声が聞きたくて、耳を澄ました。
その気持ちに応えるかのように、女の子は顔を上げて、しっかりと波音を見つめた。
瞳には、涙が光っていた。
『バイバイ。』
「!!」
目が覚めた。
冷や汗をうっすらかいた体をベッドから起こし、周りを見回す。
紛れもない、学生寮の自室だった。
「今の‥本当に夢‥‥?」
呼吸や心拍まで、速くなっていた。
夢から醒めて、こんな風になったのは初めてだ。
そして、寝る時までは確かに存在したルームメイトや、その人物の持ち物がごっそり消えていた。
「どなただったのでしょう…?」
二段ベッド上の、空いたベッドに目を向けるヨユウもなく、波音は布団に身をもぐした。
空のベッド脇のネームプレートに書かれた、
“桔梗莉菜”
の名前が消えるのを、見届けることはなく。
⇒後書き
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