〜第3章〜 清奈


[04]昼2時36分


「じゃあ!!」

ハレンは両腕をグルグル回して、

「この話はおっしま〜い!ところで相沢くん。」

「お……ん、なんだ?」

さすがはハレン。
気持ちの切り替えがうまいな。

「今度の遠足、相沢くんのクラスはどこに行くんですか?」

え?
遠足……

そういえば、僕のクラスの委員長がそんなことを言ってたような気がする。

「あれ?どこだったっけな…。場所の名前は忘れたけど、確か有山の海辺にある大きな公園だったような……。」

「あ〜。行き先同じじゃないですね〜。わたしのクラスは近くの川辺でバーベキューをすることになったんですよ〜。」

「へ〜。」

それから僕達は遠足の話で盛り上がった。

ハレンが笑うと、つられて僕も微笑んでしまう。やっぱりハレンは笑顔が似合っている。

ふっと…一瞬。
清奈も、こんな風に笑って暮らせればいいのに、と思った。

きっと、清奈だって笑うととても可愛いと思う。

清奈が、ネブラとかタイムトラベラーとかのしがらみに捕われず、
普通の女の子として暮らせたらいいのにな…。

いや、

僕が頑張って、清奈を手助けするんだ!





最後の6時間目。
ホームルームの時間だ。
委員長が前に出て、何やら図面を書き始めた。

「当日のバスの座席を決めるわよ!」

元気なこった。このクラスの委員長…瀬戸梓(せとあずさ)が大声を出して言った。常に瀬戸さんはテンションが高い。ショートヘアーで背が低い。

そしてその図面に一つ一つ数字を書き始める。一番上を書くのがしんどそうだ。

赤色チョークと青色チョークの2種類で、1〜16までの数字、合計32個の数字が埋まった。クジで座席を決める妥当なやり方だろう。

「瀬戸さ〜ん。どうして〜赤色と〜青色の〜チョークを〜使うのですかラララララ〜。」

これは、歌ではなく担任のセリフなので誤解無きよう。

「男子用のクジと、女子用のクジを用意しているわ。赤が女子で青が男子よ。」

見事に網目状に赤青の数字が書かれている。
ということは、

「そう!」

教卓を両手でバンと叩く。

「こうすれば左右の席は必ず異性が座ることになるの!名付けて、【気になるあの子のハートをガッシリ、ズッコケ新規カップル大量参入プロジェクト!】よっ!我ながら完璧だわ。」

席をそうしたからって気になるあの子のハートをガッシリできないだろうよ。あとズッコケって何だよ。

そして、
みんな瀬戸さんの催眠術にかかっているのか、まんざらでもなさそうだ。

「何言ってるんだか。」
清奈がそう言った。

…清奈はどうでもいいのかな。好きな男子とかいないのか?別に選んでほしいわけじゃないぞ。


そうこう言っている間に
僕にクジが回ってきた。

ここは、念のために祈ろう。

さくらちゃんの隣でありますよーーに!

「まだ開けちゃダメよ!セコい男子がクジを交換しだすからね。」


「………チ。」

一平…単純だな。

「一平、ちゃんと気合いを入れてクジをとったか。」
僕は一平の所に向かった。


「当たり前やん!あーーっさくらちゃんの隣であってくれー!」

一平は折られた小さな紙を握りしめ、魂をこめている。熱い魂を。まあ僕も同じか。

「あ…そうや。相沢もちゃんと気合いを入れたか?」

「もちろん。」





「どうかね〜〜?」

急に後ろからふっくんが話しかけた。

「……何だよ。」


「お前、どっちかっていうと…長峰さんがタイプなんじゃね?」




「そ…そんなわけないだろっ!僕はさくらちゃんの方が好きだ!」

「え!福原それどういうことなん!?」

「あのな…こいつ毎朝…。」


「ちょっと話聞かせてもらおか」

取り調べされるーー!!

「ほんまなん?」

「だからな、確かに本当だけど、普通のクラスメート以上の関係にはなってないからさ…」

「まあええわ。分かったわ。それにしてもまた…うらやましいもんやな〜。ワイは別に止めへん。福原も止めへんやろ……だからな。
長峰さんとラブラブフォーエバーになってもええんやで」

いやいやいや、
なんでやねん。
分かってへんやろ!

「長峰さんもめっちゃ可愛いもんな。さくらちゃん一筋のワイですら長峰さんは一瞬ビビッと来たぐらいや。まあ…お互い頑張ろな」

お互い頑張ろう言われてもな。もうええわ。



「みんなクジ回った?じゃあ一斉に開けてみて!」

僕はクジを開けてみた。
その紙には「14」と書かれていた。
一番後ろの右から2番目の席だ。先生は前に座るので、かなりの好位置をとったぞ。

「じゃあ男子から!」

そして瀬戸さんは1こずつ数字を消して、名前を書き入れる。ふっくんは丁度真ん中の一番右で、一平はやや前よりの右から2番目だった。


「次は女子よ!あたしは余ったこれにするわね」


そして、女子の名前が書き入れられた……。

あっ!


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