〜第2章〜 扉


[09]2000年3月9日 午後8時30分


僕は走り出した二人を追い掛けていた。
いきなりのことだったから慌てて走り出してつまづきかけたことは二人に会っても内緒にしてほしい。

というか、こんな僕がネブラと戦う…

…大丈夫なのか?




《貴方には天賦の才能があります。》

パルスの台詞を思い出す。

そうさ。
今更引き返すのは愚かなものだ。
やれるだけやってみよう。

ピンチになったら二人が助けてくれるだろう…。

助けてくれるよな。







え?







助けてくれるよなぁ!?







ようやっと二人に追いついた。
と思ったら、

「おい、ここは行き止まりじゃないのか?」

僕達は路地裏にいた。
右手にも左手にも、目の前にも、石造のコーポが立ち塞がり、大きな室外機が剥き出しに乱立されている。小さなブレーカーや、ポテトチップスの空袋や、空き缶が無造作に捨てられていて、目の前にはラッカーでマーキングされた派手な落書きが書いてある。今は昼だが、ここだけ薄暗かった。

「相沢くん、ここで間違いはありませんよ。ちょっと見ててくださいね。」

ハレンと清奈は、大きな落書きが書いてある壁の目の前に立つ。

「お前も来なさい。」
清奈にそう言われたので、僕も二人の横に立った。

「タイムトーキーを首にぶら下げて。」

僕は内ポケットからパルスを取りだし、首にかけた。
清奈はそれを確認した後、
「不可視空間、解放。」

そう言った。

すると



目の前の壁に横線が入り、ドアが開くかのように左右に道が切り拓かれていく。岩が押し動かされているのを想像するといいだろう。決して動かない物が動いたような…。

その出来上がった空間の先を見ると、ガラスの階段が下へと続いていて、その先は暗くてよく見えない。

清奈とハレンはその階段を降りていくので、僕もついていくことにした。



長い、長い階段が続く。

後ろを振り返ると先程の入口が音を立てて閉まっていくのが見えた。
完全に閉ざされた訳だが、周りに明かりが在るわけでもなく、気をつけて歩かないと転がり落ちてしまいそうだ。

ようやく出口が見え始める。目の前に光が見える。そこに向かい、段々と階段を降りていくとそこには…。
「何だ…?」


一番最初に感じたのは、ここは図書室では無いか、ということだ。
何千、何万という本棚が並び、高さは遥か上にまで続いている。その本は皆同じように見える。全てが、赤いハードカバーの本で、一冊がとても分厚い。

しばらく前に進むと、その部屋の中央部分に当たる所に出る。

大きな円形広場で、そこを中心に本棚が放射状に林立している。

その円形広場に3人が集まった。

「ここは…図書館か…?」

「ここは、不可視空間っていうところです。ここはタイムトラベラーにとって非常に重要な場所ですよ。」ハレンが言った。

「じゃあ…この本の山はいったい…。」

「この本にはですね…時間を切り開くパスワードが書かれているんです。それを知らないと私達は時を渡ることができません。」

僕は適当な本を一冊抜き出して中を見てみた。

その中には

「……なんだこりゃ。」




【1754年2月7日 午後3時05分…第7出口 570*742#1

1754年2月7日 午後3時06分…第7出口 1989200#3

1754年2月7日 午後3時07分……】


日時が書かれ、第7出口という言葉があり、その後に数字列が並んでいる。
それがもの凄く小さな文字でビッシリと書かれてあった。
「フェルミ、頼んだわよ。」

「了解した。」

すると
タイムトーキーが生きているかのように清奈の首から離れ、宙を飛んだ。

「ユウ、私も移動します。」
パルスの声が聞こえたかと思うと、僕の首から離れた。



「あ…じゃあ…ボクも…。」

ん?誰の声だ?
小学生の男の子のように聞こえた。

するとハレンの首からタイムトーキーが外れて宙に浮いた。
どうやら今のはハレンのタイムトーキーの声らしい。ハレンが小声で僕に説明した。

「まだわたしのタイムトーキーの紹介がまだでしたね。ステラっていうんですけど、あんまり喋らないんですよ。傷つきやすい子だから、優しくしてあげてくださいね。」

「分かった。」

天井が見えないほど高い部屋で、
パルス、フェルミ、ステラは上へと上っていく。

しかし、ネックレスがいきなり動き出して宙に浮くなんて変な感じだ。まあ中には妖精がいるから、生きているようなものだろう。


数分後


タイムトーキーらは一冊の本を持ってゆっくりとこちらに降りてきた。持ってというよりは、念力で浮かせて、という感じだ。

「2000年 3月9日 午後8時45分が問題の時刻だから…8時30分に飛ぶわ。」

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