第三章 迷い〜そして戦場へ〜
[18]第五四話
「この閃光の槍士の初撃を避けるとは…………なかなかの魔導師ですね」
「そりゃどうも。あいにく反撃できるほど強くはないんでね」
如月はマグナムで、相手が突き出した槍をかわした。
「ていうか、あんた誰だよ?」
「私はクロエ。閃光の槍士、クロエ・ジ・ハード!」
刹那、クロエの持つ槍の穂先から魔力の塊が大きく膨れ上がった。
「エクスプロージョン!」
「っ……!」
如月は素早く飛び退き、魔法障壁を展開した。
直後に膨張していた魔力塊が爆発を起こす。
辺りに白煙が生じ、煙が晴れると、二人の位置関係からちょうど中央となる場所に巨大なクレーターができていた。
「森林が再生するのにどれだけ時間がかかると思ってるんだか」
如月は溜め息代わりにそんな事を呟く。
クロエは次の攻撃をするのか、もう槍を構えている。
「いい加減ネルのところに行きたいんだが……アストラル、何とかならないか?」
『むう…………。方法ならばない事はない』
「いつにもまして歯切れが悪いな。太古の戦とやらで何かあったのか?」
『いずれ話す。今は目の前の者を止めろ』
「分かった。それじゃ頼むぜ、相棒」
如月はスッと目を閉じた。
クロエはそれを油断していると思ったのか、また魔力を穂先に集中し始めた。
だがその量は先のものとは比べ物にならないくらい膨大だ。
槍が大きく振られ、巨大な魔力の塊が如月に向けて放たれた。
「これで終わりだ! エクスプロージョン!」
「…………」
如月は爆発に包まれ、分子レベルにまで分解された――と思った時だった。
「なにっ!」
一体何が起こったのか。クロエは全く理解ができなかった。
ただ言えるのは、魔力塊がなぜか消失したという事のみ。
そして如月は、
「一刀両断、か……。悪くはない。が、良くもない」
明らかにマグナムではない武器を手にして立っていた。
「お、お前……。その剣は…………!」
クロエは驚きと動揺に戦意を完全に失っていた。
如月が手にしていたのはマグナムの形状を利用して編み出された炎の剣。
どうして彼がここまで動揺するかは分からないが、勝った事に違いはなかった。
「さあ、この戦いを終結させろ」
「わ、分かった……」
如月の鷹のような目で睨まれたクロエは、すぐさま兒壟のもとへ向かった。
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