第二章 動きだす運命


[04]第二一話



「ライトニングスラッシュ!」

 刀が振られると電気が刃状になって襲いかかって来た。

「む……ボルケノンガード!」

 それをいとも簡単に炎の壁で防ぐセイラン。
 そしてそのまま攻撃に転じる――――はずだった。

「バルザール!」
『ヒッヒヒ! 痺れな! サンダーアロー!!』

 剣先に魔法陣が展開され、矢をかたどった雷が八つ出現した。
 それらはとどまる事を知らずに、炎の壁を突破り、加速しながらセイランめがけて飛ぶ。

「まだまだ!」
『ヒヒャヒャ! 喰らいな! ライトニングサンダー!』

 今度は少女の足元に魔法陣が展開された。
 すると上空に雷雲が発生し、一億ボルト以上もの雷がセイランを直撃した。
 激しい爆発音とともに周囲に煙が発生する。

「やったか……?」

 これだけの猛攻をしたにも関わらず、彼女は息切れ一つすらしていない。

『さぁて、常人なら生き残ってないはず………右だ!』

 バルザールの指摘された方向をバッと振り向き刀を構える般若の少女。
 段々と煙が晴れてきて、彼女の視線の先に人の姿がぼんやりと現れる。

「本気で殺すなら、もう少し肩の力を抜くべきですよ」
「貴様……!」

 少女は手に持つ刀をグッと強く握り締めた。

「それでも、あなたがここまでの実力を持っているとは知りませんでした」

 完全に煙が晴れ、セイランの姿がシルエットとからはっきりとした姿に変わった。

『ヒヒヒ。言ってくれるじゃねーか、兄ちゃん』
「おや? 戦闘狂の幻獣神【バルザール】までいましたか」
『俺を知ってるたあ光栄だねえ。大人しく逝っちまいな』
「サンダーアロー!」

 再び雷の矢がセイランを襲う。
 今度は16発だ。
 まさに彼を串刺しにしようかという時に、数メートル手前で横槍が入って来た。
 突然横から飛んできた魔力の塊が、それらを撃ち落としたのだ。

「仇討ちに邪魔はいけませんよ」
「仲間の窮地を見捨てていいような戦いがあるか」

 屋内と屋上とを繋ぐ扉から、マグナムを手にした如月が現れた。

「貴様も同族か………人間のくせに小癪な」
『我が相棒、あれには我らが鬼神【アストラル】がいるようだぜ』
「紅蓮の幻獣神?」

 バルザールの忠告に対して、少女は怪訝な声を発した。
 その間に、如月は素早くセイランのもとへ移動した。
 いつでも撃てるように、銃口はもちろん敵である少女に向けられている。

『こいつは分が悪い。撤退したほうが良さそうだ』
「何を今更! 今こそが復讐の好機……!」
『アリア、引き際も肝心だ』

 般若の面を被った少女をアリアと呼び、制しようとするバルザール。
 その口調はやけに真剣味を帯びていた。

「………分かったわ。バルザールがそう言うなら」

 やや不満そうだが、少女は一応納得したようである。

「セイラン! 次は必ず殺す! 首を洗って待っていろ!」

 そう言うと、刀を地面に向けて大きく振った。
 直後、爆発が生じ粉塵が白煙とともに舞い上がる。
 如月とセイランは思わず腕で口を覆った。
 そして煙が晴れる頃には、少女の姿はなかった。

「深追いはしないほうが良いでしょう」

 セイランは服についた埃を払いながら言った。

「分かった」
「結界を解かないでいて正解だったかもしれませんでしたねえ」
「そうだな」

 周囲の安全を確認した如月は、マグナムをもとの場所にしまった。
 セイランが指を鳴らすと、結界が周縁部から消えて行き、喧騒が戻り始めている。

「さて、あなたの父君、慶喜大臣のもとへ行きますか?」
「いや……できれば明日がいい」

 すでに時刻は午前三時を回っているので睡眠を優先する如月。
 セイランもそれには賛成のようで、「分かりました」とだけ言った。



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