第一章 始まりは突然に


[01]第一話



人はなぜ戦うのか。

人はなぜ他者を傷つけ、己が欲望を満たそうとするのか。

自らの信念。自らの使命。
他者からの圧力。他者からの脅迫。

人はなぜ生きるのか。
人はなぜ他者を傷つけてまで生きるのか。

汝の答えを我が前に明かせ。
その答えこそが汝の信念、汝の武器。

さあ、我の前に汝の答えを示すのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 また夢を見た。これで何度目だろうか。
明かりが点けっ放しの部屋で、そんな事を思いながら、少年、如月耀(きさらぎ よう)は、ゆっくりとベッドから起き上がった。
そして、枕元の時計を眺めた。

「………早い」

 如月は大きく伸びをして、ゆっくりとベッドから降りた。
彼の姿はワイシャツで、どうやら着どころ寝をしてしまったようである。
 しかし、そんな事には気にもせず、分厚いグレーのカーテンを開けた。
まだ街はひっそりと静かで、空は見事な藍色だ。
 また、遠くまで見えるので、ここはマンションのかなり高い場所のようである。
如月は、あくびを噛み殺しながら部屋を出た。
行き着いたキッチンも薄暗くひっそりとしていた。
如月は、慣れた手つきで明かりを点ける事なく調理器具を取り出す。
冷蔵庫から、生卵を一個取り出し、十分熱せられたフライパンに、片手で見事に割った卵を入れた。
それから数分後、食卓には御飯、味噌汁、目玉焼きが並んでいた。
如月は、頂きます。と言って一人静かに食べ始めた。
この3LDKの部屋には、彼一人しか住んでいない。
 なぜならば、彼は親の顔を知らないのだ。さらに言えば、自身の出自すらも知らない。
今は、養子としてとある人物の保護下で暮らしている。と言っても、その人は多忙な職に就いているので家に帰って来る事は稀である。
それでも、如月は淋しいとは思っていない。
孤独こそが、唯一幸せに浸れる時間なのだ。
そうこうしているうちに、如月は食べ終わり、食器を洗い終わっていた。
その後、日課となっているトレーニングをするために、着替えを済ましてから外に出た。


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