歪みの国のアリス《長編》


[03]Black Sun《黒い太陽》B








《カシャーンッ》










金属が落下したような

無機質な音が
室内に響き渡った。

考えを巡らせていた私は



その音で

はっと我に返った。



目の前に座っている
少女の手から

スプーンが落ちたのだ。






焦点の合わない瞳が、



もうじき彼女が





眠りへ落ちることを


教えてくれた。









「・・・・」










私が無言で

シチュー皿をよけてやると


少女は

そのまま突っ伏してしまった。







小さく寝息を立てている。




私は少女をじっと見つめた。












栗毛色の髪が

燭台の火に照らされ、




光っている。










「おやすみ、アリス・・・」










私は目を閉じ、

顔を背けた。





この想いを
断ち切るかのように。












震える手で





シチュー皿とパンかごを持ち、







アリスの眠る













狭い









暗い









孤独な部屋を




後にした。




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