歪みの国のアリス《長編》


[11]Black Sun《黒い太陽》J




結局、

最終的にアリスを
守ったのは猫だった。


私はそちらに
いくことさえ叶わず、
苦虫をかみつぶしたような
気分に苛まれた。





けれど、まぁいい。




アリスは笑っている。



それなら、いいんだ・・・




ふぅ・・・
と、ため息をつき、
アリスが住み慣れた家から
去っていく姿を
陰から見送った。






「・・・いいのかい」






ふいに足元から声がした。


「なにがですか・・・」


そちらを見もせず
足元のにんまり顔に
言葉を返す。



「君はまだ
アリスを守ってないだろう」



まるで
宿題をやっていないとでも
いうような口調だ。





「・・・どういう意味ですか」


「アリスに
嫌われたと思って
臆病になってるんだね」



私はケラケラ笑う
猫を一瞥した。



「いけませんか」



「いや・・・。
でもアリスはいい子だから、
きっと受け入れてくれるよ」


「なんで貴方に
そんなこと・・・」


「これからは、
僕らの在る意味が
今までと違う・・・」






ピクッと
眉を動かして
私は表情をかえた。





「アリス・・・」





彼女は、消えてほしくない、と
猫に告げた。



それは、
どういう意味だろうか。




「僕はもう越えられた。
・・・最後は君」






アリスを、越える・・・?









「最後・・・」



・・・出来るだろうか。


彼女を越えるなんて。




いや、猫にできたんだ。

私にできないはずは、ない。







臆病な心に舌打ちをする。






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