風船ガム


[14]14


「お兄ちゃん!」

 トラックが通り過ぎたはずの場所に無傷の少年。

「お兄ちゃんの名前何っ!」

 少年が、場所を動かず問いかける。

「そらみ!そのまま空を見るで空見だ!」

 俺は無意識に叫んでいた。

「そうなんだ……」

 笑みを浮かべる少年の目には涙。

「良い名前だね……」

 言葉が途切れた瞬間。“空渡”は一瞬の光になって消えた。


 そうか……。あの時は身を乗り出していたんじゃなくて……――

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