第43章


[40]


 ――「なーなー、ちょっと休憩しないか? オレもう疲れちゃったよー、ネズミー」
 スリバチ山の山道に差し掛かったところで、子ニューラがくたくたになった様子で愚図る。
「オメエが寄り道させたせいで無駄に疲れてんだろうが。我慢して歩きやがれよ」
 本音のところはあっし自身も疲れきっちゃあいたが、これ以上こいつのワガママを通すのは癪だ。
「なあ?」あっしはニャルマーに振り向いて同意を求める。
「今回ばかりはアタシもそのガキに賛成さね。散々走り回らされたし、奥の手だった催眠術を
何回も使わされて、くたくただよ。元々そんなに体力ある方じゃないってのにさ」
 気だるくニャルマーはぼやく。
「あんだよ、オメエまで……」
 口では不満そうに言いながらも、それ以上反論する気も無く、あっしは判断を仰ぐように
マフラー野郎に目をやった。マフラー野郎は、巣に帰ろうと逸るポッポやオニスズメのどこか寂しげな
鳴き声響く橙色と紫色の入り混じった空を見上げ、暫らく思案する。
「うん、確かにこのペースだと山道の途中で夜遅くになってしまいそうだな。夜の山は危険だ、
疲れきった体じゃあ余計にね。そうだな、適当な場所を見繕って一晩野営しようか」
「やったぁ!」
 マフラー野郎の決定に、子ニューラは飛び跳ねてはしゃぐ。
 ちぇっ、またクソガキの思い通りか。だが、ま、あの団員共もしっかりお縄になっただろうし、
しばらくは追っ手の方も大丈夫だろうか、あっしは疲れに任せて楽観的に考えることにした。
 その日の晩は、空に月が無い不気味な程に闇の濃い夜だった。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.