第43章


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 てんやわんやのごたごたの末にエンジュを脱したあっしらは、子ニューラの案内に従って
まずはエンジュの東、スリバチ山方面へと向かった。
 まったく、紅葉の余韻に浸る暇も無かったぜ。エンジュシティを振り返り、
夕日に染まってより紅く煌々と照る紅葉とスズの塔を見やって、やれやれとあっしは嘆息を漏らす。
 ――「そういえばチビ助君がそのスズの塔の上に見たって言う七色の大きな鳥って、
結局何だったんだろうな。話を聞いていても変な嘘を言う子だとは思えないし、迷い込んできた
癖毛の子も同じように塔の上をぼんやり見上げて、引き寄せられるかのようにやってきたんだろ?」
 エンペルトは首を傾げて、問い掛ける。
「ん、後で知ったことだが――何でもスズの塔の屋上は伝説の霊鳥が舞い降りてくる神聖な場とかって
云われてるそうで。その霊鳥の姿ってのが七色に輝く大きな鳥なんだとか――」
「へえ! ってことは、チビ助君達はもしかしたらその霊鳥を見たのかもしれないってことか?」
 少し興奮気味に食いつくエンペルトに、ドンカラスは「いんや、ありえやせんよ」と
苦笑気味に首を横に振るう。
「どうしてだ?」
「霊鳥に纏わる伝説の一つにこんな話があってな。”その姿を見た者は永遠の幸福が約束される”
……だったら、何の罪もねえ筈のチビ助がどうしてまたあんなひでえ運命に巻き込まれなきゃならねえ?
 チビ助が本当にその姿を見ていて、その霊鳥が実在してやがんなら、てめえの加護なんて
とんだ嘘っぱちだって、その高飛車に澄ましているであろう面をぶん殴ってやりてぇよ」――


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