第43章


[37]


「な、な、カラス、お前も、ロケット団のポケモン。でも逆らって逃げ出した、怖くないか?
奴ら追ってくる、もし捕まったら殺される、な? な?」
 ”ギィ”とゴルバットが頷く。
「そりゃまあ――」
 ラッタに尋ねられて、あっしは少し言葉に詰まる。改めて、冷静に考えてみりゃ、あっしは何とも
恐ろしいことをしでかしたもんだ。今回の団員共はとんだ三流の下っ端だったが、幹部やエリート団員の中には
もっと冷酷で頭が切れる奴がいるし、連れているポケモンだってもっと強力だ。
 だが――あっしはちらりとマフラー野郎を見やる。うっかり目が合い、マフラー野郎は挑発するように
ニッと微笑んだ。
 はあ、とあっしは深々と溜息を吐いた後、改めて覚悟を決めるように、すう、と息を深く吸い込む。
「ケッ、そりゃ、ちっとも怖くねえっつったら嘘になるけどよぉ。一生、奴らの言いなりになったまま、
テメエらみてえにいつ使い捨てられるかも分からない日々をずっとびくびく過ごし続けて、でっけえ大空も、
この燃えるような紅葉も、まだまだ計り知れねえこの世の広さと綺麗さを、自由を一度も味わわねえで
くたばっちまう方が今となってはよっぽど怖ええや」
 言ってのけた後、小っ恥ずかしくなってあっしはズッと鼻を啜った。
 ラッタとゴルバットは再び顔を突き合わせ、話し合う。
「そか、そか、うん、うん。お前のおかげで決めた、俺も、こいつも、団から逃げだす。俺もこいつも、頑張って飼い主
守れば、飼い主達も俺とこいつ危ない時、守ると思ってた。けど、違った。俺も、こいつも、もう奴らこりごり」
”ギィ!”とゴルバットは強く頷いた。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.