第43章


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 ぐっすりと眠りこける団員共からマフラー野郎はそっとマフラーを解き取り、
ぱたぱたと丹念に汚れを払う。
『ったく、そんな奴らまで手間掛けて生かしてやる義理なんざねえだろうに、どれだけお優しいんだか』
 たっぷりとトゲを込めてあっしは言う。
『どんな命にだって生きている意味はある、ってね。こんな奴らでも生きてさえいれば
いつかは変われるしれない。流れる川の水がいつまでも同じじゃないみたいに、
心だって入れ替えられる。借りた言葉だけれど、俺は信じたい』
『ケッ、こんな澱みきったヘドロ沼みてえな奴らがそう簡単に変われるかっつの。生かしてやった恩も
逆恨みに変えて、目覚めたらすぐに俺様達の事を報告するに違いねえや。もういい加減に用は済んだろ、
さっさとこの場を離れようじゃねえか。電撃で大きな音も立てちまったし、他の人間が来るかもしれねえ』
 言って、発つ準備をしようとしていると、近場の木の影からカサカサと音が立ち、何かがぬっと顔を出す。
あれは助けてやったぶかぶか帽子のガキだ。ほとぼりが冷めるまで下手に動かず身を隠していたようだ。
きっと裏には癖毛のガキも一緒に隠れているんだろう。
 まあ、特に気にしなくても害はねえか。あいつらにあっしらの行動がどんな風に映っていたかは
わからねえが、野生のポケモンに近付くのは危ないと親からちゃんと刷り込まれてやがるだろう。
あっしらが去ったのを見計らって、勝手に逃げていく筈だ。
 しかし、どういうわけかぶかぶか帽子のガキ木の裏からそのまま姿を晒し、まるで臆する様子もなく
にこやかにこちらへと向かって来ようとしていた。
「お兄ちゃん、そいつら野生のポケモンじゃないの!? 危ないよ!」
 木の裏から癖毛のガキも顔を出し、驚いた様子でぶかぶか帽子のガキを止める。
「この子達は大丈夫さ。危ない所を助けてくれたのを見ただろ? ちゃんとお礼言わなくちゃ」


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