第43章


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 団員共はぞくりと身震いし、顔から血の気が引く。
「畜生の分際で、何をごちゃごちゃ喚いてやがる……?」
「大方、遅い昼食の分配の仕方でも相談してやがるんだろう。こいつらの体格なら
一人分で腹一杯になるかもしれない、お前、先に犠牲になって来い!」
「ふざけんな、てめえが先に食われろ!」
 縛り上げられた惨めな体勢で、自分だけでも助かろうと互いに押し退け合う二人を見て、
あっしは心底呆れた。こいつらの小者ぶりに対してもそうだが、少し前までこんな奴らに
びびってへーこら逆らえずにいた己のなんと情けなかったことかと。
『誰がてめえらの骨の髄まで腐り果ててそうな肉なんざ食うかっつの』
 ぺっ、とあっしは唾を吐き捨てる。
『見ていられないな。これ以上マフラーを汚されてもたまらない。お嬢さん、後は頼んだ』
 ふう、と見るに見かねた様子で息をつき、マフラー野郎はニャルマーに声を掛ける。
『はて、あたしゃアンタほど一思いにやれる強力な攻撃手段は持ち合わせてはいないからねえ。
じわじわと嬲り殺してやりゃいいのかい?』
 ニャルマーは爪を見せびらかす様に伸ばして素っ気無く問い返す。
『気持ちは分からないでもないけれど、なるべく穏便に頼むよ。スリープの時みたいにさ』
 マフラー野郎はにこやかながら有無を言わせる余地の無い笑みを浮かべる。
『はいはい、分かった分かった。精々、奴らには飛びきりの悪夢を見せてやるさね』
 ニャルマーは諦めた様子で応じ、面倒げに尻尾を揺らしながら団員共に歩み寄っていった。


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