第43章


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「チッ……おめえも、やるならさっさと電気でビリビリッとやっちまえよ。何でいつまでも追っかけてんだ」
「下手に放てばあの子達まで巻き込みかねない。機会を窺ってはいるが……」
 パリパリと頬から電気を漏らしながらマフラー野郎は答える。
「おいおい、このクソガキ――ニューラを助けるときには躊躇無く派手にドッカンドッカン
ぶちかましてやがっただろうが」
「それはあくまでこの子の傍まで行ってからだったろ? 俺の電撃は無差別に広い範囲を攻撃するにはいいけど、
一点を狙い撃つのには不便だ。当ててはいけない対象が同じ射線上にチラつく中、しかも走りながらじゃあ、ね」
 マフラー野郎は歯痒そうに眉をひそめる。それを聞き、子ニューラの耳がピクリと動いた。
「うわ――!」
 前方から、ガキの悲鳴が上がる。見ると、走り疲れて足でももつれさせたのか地面に
倒れこんだ癖毛のガキを、ぶかぶか帽子のガキが懸命に助け起こそうとしていた。
その隙に、牙を剥き出したゴルバットとラッタが容赦なく迫る。
「――ッ! イチかバチか、やるしかないか」
 ギリ、と歯を噛み鳴らし、マフラー野郎は激しく電流を迸らせる。
「まったぁ! それなら得意だ、オレに任せろ!」
 唐突に得意げに子ニューラが叫ぶ。「はぁ?」と怪訝に振り向くあっしの顔の横すれすれを、
微かな風を切る音が二度過ぎ去った。間髪入れず、再び前方から、今度はガキのものじゃない濁声の叫び声が上がる。
見れば、ゴルバットとラッタが頭を痛そうに抱えて悶絶し、近くに野球ボール大の氷塊が二つ転がっている。
「見たか! 親父譲りのゴーソッキュー! 奴らの後頭部ど真ん中にストライクだぜ、ひゃはは!」


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