第41章


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 理由までは無理でも行き先を聞く程度なら大丈夫だろうと、ロズレイドは思い立って地図から顔を上げ、
口を開きかけた時、視界の右隅で何かが微かに動く姿がちらついた気がした。ロズレイドは気になって
そちらに首を向けてみる。すると、その視線少し先にある木、その根元に開いた穴の中で茶色い影が、
何かを守るように体を丸めて震えているのが見えた。少し前にマニューラに追い払われたオオタチだ。
木の周りを毒々しい緑色をした子蜘蛛達に取り囲まれてしまい、もうどうにも身動きが取れない様子だ。
 ――あの糸は、芋虫なんかではなくあの蜘蛛達の……!? オオタチは奴らから逃げていたのか、大変だ――!
「マニューラさん、あれを!」
 いてもたってもいられず、ロズレイドはマニューラを呼び止める。
「あぁ?」
 マニューラは小うるさそうに振り返り、ロズレイドの指し示す方向を見やった。
「あー、ありゃさっきの。周りのはイトマル共か――相変わらず、気味がわりー奴らだ――」
 ぼそりと呟いて、マニューラは不愉快そうに顔を顰めた。
「見つからねー内にオレ達もさっさとこの場を離れるぞ。きっと直に、名前を口に出したくもねー”ヤツ”が来ちまう」
 陰でぶるりと身を震わせ、マニューラはそそくさと先を急ごうとする。
「助けないんですか?」
 ロズレイドは唖然とした。てっきりマニューラならばすぐにでも助けに入ろうとすると思っていたからだ。
 マニューラは、「はぁ?」と片眉を吊り上げる。
「なんでそんなことをする必要があんだよ?」
「だ、だって、あんな集団で襲われたら、きっとあのオオタチと――」
「おいおい、このオレが無償で誰かを助ける正義の味方や博愛主義者にでも見えんのか? だったら、
目に効くいい薬草を教えてやるぜ」
「そんなこと言って、マニューラさんは前に僕のことも危険を冒してまで助けてくれたじゃないですか!」
 マニューラは面倒くさそうにばりばりと頭を掻く。

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