第41章


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「一匹で先回りしてやがったのか……?こそこそ隠れて何のつもりだ、テメー。
ネズミちゃんに言われて連れ戻しにでも来たか?」
 咳き込むロズレイドに、冷ややかな視線を向けながらマニューラは言い放つ。
「す、すみません……まずはあなたに謝りたくて……」
「謝る?」マニューラは思い当たらずに怪訝に首を傾げた。
「あの状況で内通者を疑うようなことを言えば、あなたが一番に怪しまれてしまうのは十分に予想できたのに、
軽率でした。こんなことになってしまったのは、僕のせいです」
 体を震わせて深刻に謝るロズレイドとは対照的に、マニューラは「そんなことか」と呆れたように鼻を鳴らす。
「別に、オメーが何も言わねーでも、遅かれ早かれオレは追い出されるか、自分から出て行っただろうよ。
元々、オメーららとオレとじゃ追う相手が違うんだからよ。寧ろ出て行く良い切っ掛けになったぜ」
「追う相手……?誰かを探していらっしゃるのですか?」
 うっかり零してしまった言葉に耳聡く食いつかれてしまい、マニューラは面倒くさそうに頭を掻いた。
「あー、とにかくそういうことだ。用はそんだけか? 気が済んだならさっさと帰りな。オレに戻る気はねえ」
「それならば、僕もお供します!」
「こっちはテメーがついてこられるような甘っちょろい道じゃねーの。帰った帰った」
 しっ、しっ、と半ば追い払うような仕草で手を振って、マニューラはロズレイドに背を向けた。
「あなたを放って戻れなんてしません、そんな危険な道なのであれば尚更です」
 強情に言い張るロズレイドを、マニューラは無視して歩き出す。いくら振り切ろうと足を速めようと、それでも背後からは、懸命に足音がついてくる。その内に、やれやれとマニューラは溜め息をつき、諦めたように歩を止めた。
「――忘れてたぜ、ロゼ。オメーの諦めの悪さを。このままじゃこっちが先に参っちまいそうだ。
もういい、好きにしてろ。だが、テメーの身はテメーで勝手に守れよな。いざとなったら、オメーになんて気を回している余裕はねーぞ」


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