第41章


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二匹は先回りするように、マニューラが向かっていると思われる方向の僅か前方に着地した。
「後はお前に任せよう。あの者を救えるかどうかは、全てお前の裁量次第だ」
「すみません……あなたには、何とお礼を言ったらいいのか……」
「礼などいらぬ。ただ、ひとつだけ約束して貰おう。ここで私に会った事は誰にも話すな。
 只の通りすがりのポケモンが、ほんの気まぐれで手を貸した、それだけの事だ」
「は、はい!お約束します!本当に……有難うございました!」
ロズレイドは深々と頭を下げた。
そして、再び顔を上げた時――竜の姿は忽然と消えていた。

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「あら、まあ……面倒臭がりの不精者が自ら出張るとは、珍しい事もあるものですわ」
周囲の木々がグニャリと曲がり、歪んだ空間の隙間から、煌びやかな乳白色の蛇が姿を現す。
「貴様か。異空間から覗き見とは、余り良い趣味ではないな」
その声に振り向きもせず、ボーマンダは呟く。
「……役を退いたとはいえ、我が神体に願を掛けられれば無下にもできまい」
「そう言えば宴の時、あの小娘に言い寄られ、随分と鼻の下をお伸ばしになられておりましたわね」
「だっ……だ、誰がいつ、そのようなものを伸ばしておった?!」
「ほほほほほ、大いに結構ですわ。役目ではなく、あなた自身の感情に従った行いなのですから」
艶然と嘲笑するミロカロスに舌打ちしながら、ボーマンダは誤魔化すように話の矛先を変える。
「……時に、あやつはどうした」
「さあ……大方、何処かであの方を見守っておりますでしょう。文字通り、陰ながらに」
「だろうな。口では反発しながらも、なかなか親離れができぬ奴よ」
「それは、我々とて同じではありませんか。されど、ここは古より存在する悠久の地……
土地神とも言うべき者も数多くおりましょう。彼らを刺激せぬよう気を付けねば」
ミロカロスはふと、遠くに高くそびえる、古い木造の塔に目を向けた。
その屋根の先端に、虹色の光が微かに瞬き、薄いベールのように靡いている。
「もっとも……我々が関わるまでもなく、悠に一波乱ありそうですが」

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