第39章


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 拳をぐいと掲げ、叩きつけるようにパルキアに向かって叫んだ。見下す赤い眼を、これでもかと睨み返した。

 数秒の沈黙を置いて、堪えきれないといった様子でパルキアが笑う。
「なんと傲慢なネズミだこと。だからこそ、それでこそ――」
 高ぶる感情を抑えるようにして、パルキアは俺に手のひらを差し出した。
「参りましょう。ギラティナの奴めに思い知らせてやらねばなりません」
 力強く頷いて、俺は上に飛び乗る。パルキアは片手の爪先で滑らかに空を撫で付け、開いた空間の隙間を目掛けて水面を跳ねるように巨体が飛んだ。
 待っていろ。意地と誇りを見せ付けてやる。王として、世界を担わされるものの一つとして。

 異空間に入ると、パルキアの周りに色彩の流れが引き寄せられ、整然と並び始めた。色取り取りの風景が一面に敷き詰められた様は、さながら壮大なステンドグラスだ。
パルキアは全容を見渡しながら、色の位置をずらし、目的の出口を探っていく。
 本来の主が宿ると、こんなにも扱い方が違うのか。これなら墜落の心配はなさそうだ。

 程なくパルキアは一片に視線を留め、目の前に手繰り寄せる。
そこから覗く景色は、全くの暗闇。どんなに強い光が当たろうと飲み込んで掻き消しそうな、黒の中の黒だった。
 苛立たしげにパルキアが牙をガチリと噛み鳴らす。
「当然、塞いである、か。不用意に飛び込めば今の私では危うい」
 どうするのだ?俺が尋ねる前に、再びパルキアは空間を繰り始めた。
「ディアルガの下へ飛びます。対抗するには、やはり奴の協力は不可欠だ」


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