第39章


[31] 


 ちら、とパルキアは倒れている自分の神体を見やってから、再びこちらに目を戻した。
「わたくしの領域へ一体どの様なご用件で? 隔たれた空間に偶然辿り着くなどありえないことです。他の神の手引きでもない限りは……」
 語り口は一見穏やかだが、内包された威圧がぴりぴりと肌を刺してくる。
一体何から、どう話すべきなのか。慎重に言葉を進めなければならない。動けずにいる俺に、パルキアは首を伸ばしてくんくんと嗅ぐような仕草をした。
「あなたから嫌な臭いを感じますわ。寂れ果てカビにまみれた墓地のような、とても嫌な臭い」

 途端にパルキアの全身から湧き出る殺気にも似た気迫に、ぞくりとして離れようとすると、首の周りの空気が急に固まったような感覚に捕らわれた。
「げほッ――」
 首が絞まり咳き込む俺を、パルキアは凍て付くような冷たい目で見下ろす。
「下手に動かないことです。空間の刃が首をいつでも斬り落とせるよう狙っている。一体、奴になんとそそのかされた?」
 質問はすでに『拷問』に変わっているのだ。豹変した態度がそれを物語っていた。
 背後から巨体がゆっくりと起き上がる音が聞こえる。


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