第39章


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「こやつの力で道を切り開く。揺れに備えよ」
 ギラティナの言葉に続いて、パルキアの神体は大きく咆哮を上げ、呼応して両肩の宝石が強く輝いた。
空間がびりびりと震え、揺れる。俺は甲殻の隙間に手をやり、しっかりとしがみ付いた。
神体は右手を勢いよく縦に振り下ろし、淡い桃色に輝く爪が空に同色の軌跡を残す。
光の軌跡はあっという間に裂けて広がり、神体が悠々と入り込めそうなほどの大きさになった。

「行くぞ。振り落とされるな」
 そう告げ、ギラティナは空間の裂け目へと神体を飛び込ませた。
瞬間、俺の全身は強い光と妙な浮遊感に包まれる。光に少しずつ目が慣れ、俺はそっと目を開いてみた。爪の合間から覗く“そこ”の様子は――形容しがたい、まさに異次元そのものだった。
協調性の無い様々な色達が一面に入り乱れ、異様な色彩の奔流となって流れていく。
その色の一つ一つが、よく見れば写真のように切り出されたどこか別の風景だと気づく頃には、すっかり目が回って気持ち悪くなっていた。

 気分を治そうと目を閉じ、耳を澄ましてみる。目に煩い見た目に反して、この空間に余計な音は殆ど無い。
聞こえるのは自らの高鳴る鼓動と、パルキアの甲殻が擦れ合って軋む音くらいだ。
「気づいている通り、お前を送り込んだ地は今となってはパルキアの領域。
お前達が生きる世界の可能性の一つとして、試験的に作られた地よ」
 その深海のような静寂の中、おもむろにギラティナは語りだす。



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