第38章


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 かっとなった様子でニューラは勢いよく振り替える。
「あの時、俺はすぐ後ろの方にいたから知ってんだっつーの。マニューラが怪我したのはテメーなんかをかばいに行ったせいだってな!」
 今にも掴み掛かりそうな剣幕で吐き付けられる怒声。
「マニューラさんの件は僕も心の底から悔やんでいます……。しかし、僕だって途中あんな風に細工をされていなければ、道に迷ってイノムーの群れの前に飛び出すような羽目にはならなかったでしょう」
 それを跳ね返すようにまっすぐにニューラの目を見ながらロゼリアは言う。
「俺が何かしたとでも言いたいのかっつの?知らねーな。勝手にテメェが指示を読み間違えたんだろう」
「指示を読み間違えるとは?僕は足跡が不自然に消えていたことを言うつもりだったのですが」
 ニューラは余計な口を滑らせたことに気付き、はっとした表情を浮かべる。
「……どうやら両方あなたの仕業で間違いなさそうですね」
 その一瞬を見逃さず、矢継ぎ早にロゼリアは続けた。
「……チッ、だがそうだとしても、どうするんだっつーの。テメェみてぇなヘナチョコに何ができるんだ」
 しかしニューラは悪怯れることなくすぐに居直り、ロゼリアを今にも殴りかかりそうな様相で睨み返してくる。
 やっぱり話し合いだけで解決できるような相手ではないのだろうか。ロゼリアは顔を強張らせる。
「聞かせてください。あなたは僕の何がそんなに気に入らないのですか?」
 それでもめげずにロゼリアは尋ねた。手元はいつ飛び掛かられてもすぐ対応できるよう、悟られぬ程度の長さに毒針を構えている。
「弱ェくせにいつまでもぐちぐちうぜぇんだっつの。何でテメェみたいなのが四天王なんだ……!」


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