第37章


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「まったく、そんなプライドなんて気にしてる場合じゃないでしょ」
 悔いる様子の全く無いルカリオを、ミミロップは更に責める。
「次は無い。奴は私に誓った」
「信用できないと分かり切ってる相手です」
「信じる者がただの一人もいなければどうなる?
 何も掴む所がなければ、堕ちるところまで堕ちて、二度とはい上がれはしない。
だから、奴らに最後のチャンスを与えることにした。私は奴らを信じる」
 信じる――。ミミロップの心は強く打ち付けられる。
あれだけの目に遭わされながら、尚もそう言ってのけたルカリオの精神に。
それに比べ、自分はなんと心の小さかったことか。
 ピカチュウの顔をミミロップは思い描いた。直接本人の口から聞いたわけじゃないのに、私が邪魔だから置いていったんだと思い込み、信頼を疑ってしまった。
「分かりましたよ、もう! チョコレートみたいに甘いんだから」
 ミミロップは諦めたようにうなだれ、言ってみせた。
 ――きっとピカチュウにも何か事情があったんだ。信じてみよう。もし戻ってきたら、笑顔――とはいかなくても、あまり怒ったりせずに、ちゃんと帰りを迎えよう。
「すまないな、チャーレム殿」
「……仕方があるまい。ここは某も堪えよう」
 ふう、とチャーレムは息を吐いた。

「うむ……まとまったようだな。この度は、元とはいえ、島の者がお主らに多大な迷惑を改めて詫びよう」
 ハガネールは深々と頭を下げる。
「これから、あんたはどうするの?」
「ヤミラミどもが民の心身や島に与えた被害は小さくはないが、ぬしとして責任をもって立ち直らせていくよ」
「ねえ、物は相談なんだけどさ。よかったら、私達の組織に入らない?そうすれば、ドンや皆から色々と助けてもらえると思うし」


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