第37章


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 とうとう我慢の限界を超えたのか、拳に力を込めてミミロップはヤミラミへ向かっていく。
修業の中で、新たに身に付けた水の波動。まだ遠くの敵に放てる程には力を練れないが、
直接触れて流し込めばゴーストにも多少のダメージを与えられるはずだと、ミミロップは思い立った。

 だが、いくら躍起になって拳を振り下ろしても、ヤミラミ達にはかすりもしない。
今まで、闇に溶けるヤミラミ達の姿をミミロップがうまく捉えられていたのは、
ヤミラミが攻撃前に発する目の輝きと、波導をじっくり読んで察知できたおかげだった。
攻める側となった今、そのどちらも期待できない。熟練し切ったとは言い難いミミロップの波導の読みでは、
どうしても読みが一手遅れ、夜目が利くヤミラミ達には良いようにかわされてしまっていた。

 ヤミラミは、もっと怒らせようと、更に執拗にミミロップを嘲る。
まだ寸での所で持ちこたえ、ミミロップは怒りの一線を超えてはいない。
もう負ける要素は無いとも思ったが、ヤミラミは慎重に慎重を重ね、
完全に我を忘れさせ、体力を消耗させてから仕留めることにした。

 目論みどおりにミミロップはヤミラミ達に振り回され、徐々に徐々にばて始めて攻撃の速度が落ちていく。
『勝った!』ヤミラミは勝利を目前にし、心に余裕ができたと同時に、ふと、とある話を思い出す。
まだそれほど昔ではない頃に急に現れ、あっという間に勢力を拡大し、
今やシンオウ中のポケモン達を完全に牛耳ってしまいそうな組織の話を。
組織のボスはピカチュウ族で、その主な側近は、ロゼリア族、ムウマージ族、
そして、ミミロップ族だと聞いている。
 これは、もしかしたら最後の駄目押しのネタに使えるかもしれない。ヤミラミはほくそ笑んだ。

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