第35章


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 平然を装うルカリオを、意地悪げににやつきながらミミロップは見つめた。
「その様子だと、随分ご無沙汰って感じですね。本当は師匠のお土産に持ってきたんですけど、
教えてくれないなら必要なさそうかな。私も今は甘いもの控えてるし……処分しちゃおっかなー」
 そう言って、ミミロップは片方の手に炎を灯す。そして、じりじりとチョコレートへと火を近付けていった。

「一度溶けてからまた固まったチョコってあんまり美味しくないんですよねー」
「おのれ、卑怯な真似を……」
 炎が近づくにつれて少しずつチョコレートは溶け始め、地に滴った。同時にルカリオの頬にも冷や汗が伝う。
 一滴、二滴、三滴――。

「えぇい、わかった! また面倒をみてやる。だからそれ以上溶かすのをやめて、それを渡せ!」
 堪らずにルカリオは声を上げる。勝ち誇ったようにミミロップは微笑んだ。
「きゃー、さっすが師匠! ありがとございまーす!」
 嬉しそうに飛び付こうとしてくるミミロップを避け、チョコレートを奪い取ると、ルカリオはそっぽを向いた。



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