第35章


[08] 



 痛いところを突かれ、ミミロップは苦笑いを浮かべて言葉を一瞬詰まらせたが、ここまで来て引き下がることはできなかった。
「また色々教わりたいかなー、なんて」
「断る」
 すげなく一蹴され、ミミロップは無理矢理作っている笑顔を引きつらせる。

「また教えてほしいだと? どれだけ面の皮が厚ければそのような台詞が吐けるのだ。一瞬の気の迷いで、
お前を弟子になどしてしまったことを今でも深く後悔している。お前を傍に置いてからというもの、
ろくな事が無かった。大体、あの時も――」
 今までやりどころがなく溜まっていた欝憤を噴出させるようにルカリオは説教を続けたが、
急に鼻をぴくりとさせて黙り込み、ある一点に目を向けた。
視線の先、ミミロップの手にはどこから取り出したのか銀紙に包まれた板状の物体が握られている。

「気付きましたー? とろける程に甘ーいあれですよ、あれ。師匠、確か甘いの大好きでしたよね」
 銀紙の端を少し剥がしてみせ、悪戯っぽくミミロップは笑う。手に握られていた物の正体はチョコレートだ。
 ルカリオは酒に縋りつくアルコール中毒者のようにチョコレートに手を伸ばし掛けたが、
はっと手を戻して垂れかけていた涎を拭い、己の頬を叩いた。
「……それがどうした」



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