第35章
[07]
付きあいきれないと、チャーレムはミミロップを置いてさっさと先に、ルカリオが仮住まいとしているら
しい洞穴の方へと向かった。置いていくなと文句をたれながら、ミミロップはチャーレムを追う。
洞穴はそこそこ広く、湿気もそれ程ではない上、近場に先程の泉もあり、確かに巣穴には絶好の環境だと感じられた。
程なくして二匹は、瞑想に耽る一匹のポケモンを見つける。人型ではあるがその頭部は犬か狐に似ていて、
黒い覆面をしているかのような模様がある。そして、全身が短めの毛並みに覆われていた。
毛の色は部位によって大きく異なり、大体は青色だが、手の先や膝から下は黒く、胴はクリーム色をしている。
二匹の接近を察知したのかポケモンは両目を開き、無言のまま不思議な力強さに満ちた赤い瞳を二匹に向けた。
チャーレムは両手の平を合わせ、深々と礼をする。その横で、ミミロップは拳法のような構えをとって、深く静かに息を吸う。
「お初にお目にかかる、ルカリオ殿。我が名はチャーレム。そしてこの者は――」
チャーレムが話し終わらぬ内に、ミミロップは拳を燃え上がらせ、気合いの声を上げながらルカリオに向かっていった。
ルカリオは即座に戦闘態勢に入る。その構えは、先程のミミロップものとよく似ていた。
右手に群青色のオーラのようなものを纏わせると、それを輪状に変化させ、向かってくるミミロップに放つ。
水の波紋のように宙を伝わっていくそのオーラに触れた瞬間、ミミロップの炎は消えさった。
そして、それとほぼ同時にルカリオは間合いを詰め、炎を纏った脚でミミロップを蹴り飛ばす。
だが、大分加減されていたのか、ミミロップはすぐさま受け身を取って、起き上がった。
「いたた……。いやー、さすがの強さですね。あははー、あのー、そのー、お久しぶりです、師匠。私のこと覚えてます?」
ルカリオは深く目を閉じ、迷惑そうに小さく鼻でため息を吐く。
「この波導の色、その振る舞い――姿は大分変わってはいるが間違いない。覚えているぞ。
熱心にしつこく付き纏ってきた割りには、すぐに音を上げて逃げ出したお前が、今更何をしにきたのだ」
二匹のやり取りを、チャーレムは呆気に取られてただただ見ていることしかできなかった。そして、ふと、
ルカリオの雰囲気がどことなくピカチュウに似ていることに気付く。
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