第35章


[05] 



 ミミロップの心中は穏やかではなかった。洋館に着いてからも、キュウコンの言葉が頭を巡っていた。
ひどく辛辣ではあったが、言っていたことはそれほど間違ってはいない。それがまた苛立ちに拍車をかけた。
 今はロゼリア達と馴れ合ってばかりじゃいけない。強くなってあの忌々しい狐と、黙って自分を置いていったピカチュウを見返してやる。
固く決心して、ミミロップは洋館の扉を蹴り開けて勢いよく外へ駆けていった。
ドンカラスのくだらない冗談など真に受けてはいないが、一人で飛び出ていく口実にするには丁度良かった。
 裏庭へ出ると、ミミロップはすぐにチャーレムの姿を見つけることができた。チャーレムは平たい岩の
上で座禅を組み、身動き一つせずに深く目を閉じていた。一見すると眠っているように見えるが、感覚を根
のごとく周囲に張り巡らし、意識を研ぎ澄ませている。
「何用か?」
 歩み寄る存在に気付き、チャーレムは目を開けた。
「ちょっとあんたに頼みたいんだけど」
 ミミロップはチャーレムに事情を話す。

「――なる程。各地を放浪している波動の達人、その名はルカリオ。彼が今、鋼鉄島に滞在しているのは確かだ。だが弟子は滅多にとらんと聞くぞ」
「それは大丈夫よ、きっと」
 名を聞いた時のミミロップの既に知っていたかのような態度と、その妙な自信をチャーレムは怪訝に思う。
だが、断る理由も無いし、ごねられるのも面倒だった。
「まあいい。格闘家の端くれとして彼とは一度、手合せしてみたかったところだ。案内しよう」
 噂に名高い波動の使い手の技を一目見ておきたいとも思い、チャーレムはミミロップを島まで連れていくことに決める。
「ありがと。でも島なんでしょ。泳いでいける距離なの?」
「水上の足はある。おぬしらがカントーに行ってる間、ドン達は何もしていなかったわけじゃあないぞ」
 チャーレムは岩から降り、洋館とは反対方向へとどんどん歩いていく。
首を傾げながらもミミロップはその後をついていった。




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