第35章


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 長い間、袋の中で木の実と共に乱暴に揺さ振られた後、目的地に着いたのかようやく揺れが収り、ロゼリアは安堵する。
しかし、それも束の間、急に体の向きが逆さまになり、ゆさゆさと振り落とされて背中をしたたかに地面に打ち付けた。
背をさすりながら起き上がろうとするロゼリアに、更に追討ちするかのごとく木の実が雪崩のように降り注いで覆い被さる。
「出て来いテメーら! これが今日の戦利品だ」
 マニューラがそう叫ぶと幾つもの声と足音が集まってくるのを、ロゼリアは木の実の山に埋まりながら感じた。
「あら、しみったれの鳥公にしちゃ随分と気前がよかったわね。どんな手を使ったわけ?」
 その中の雌のものらしき声がマニューラに尋ねる。
「へっ、交渉の腕だよ、腕。メンドクセー条件が付いちまったけどな。しめてオレン十日分にオボン六日分。
一度に持ちきれなかったから、誰かまたあのボロ屋敷に取りに行きな。ボンクラが渋ーい顔して歓迎してくれるだろうぜ。
ま、そりゃさておき、とりあえず今あるのを分けて持ってけ。喧嘩すんじゃねーぞ」
 周りの声が尚一層騒がしくなり、ロゼリアの身にのしかかる重量はどんどんと軽くなっていった。
やっと自力で抜け出せそうだと思った矢先、不意に首根っ子の辺りを尖った爪に捕まれ、ロゼリアは引っ張り出される。
 木の実の山から外へ出た瞬間、ヒヤリとした空気がロゼリアの全身を包み込む。そこはキッサキのニューラ達の巣穴。



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