第33章


[08] 



 コピーは蓄めた電気を開放し、全身へ纏わせる。
「お前にも、この程度できるであろう? 来い。正面から正々堂々と、完全に叩きのめしてやる」
 こんな奴に負けるわけにはいかない。ましてや自分の偽物などに。

「望むところだ」
 同じように俺は電流を身の隅々にまで這わせる。あまりの出力の高さによる激しい負荷と、
我が身さえ焼く痛みも構わず、敵を倒す事だけをただ考えていた。

「打ち砕いてやろう、オリジナル。身も、心も、完璧にだ!」
「負けるものか、偽物め。お前の存在を、許してはおけん!」
 己自身を一筋の雷と化し、俺と奴は互いを目がけ駆け出した。

     ・

 洞窟内に立て続けに響く轟音。
 その方向、ぶつかり合う二匹のピカチュウを、ロゼリアは冷ややかに見やる。
「嫌ですね。暑苦しい。もう少しスマートに戦えないものなのでしょうか。ねえ、オリジナル?」
 そう言い、ロゼリアが視線を戻した先には、もう一匹のロゼリアが油断なく身構え、
自分のコピーであるそのロゼリアを睨み付けていた。

「おや、そんな怖い顔をしないでくださいよ」
「うるさい、化け物。僕と同じ格好、同じ声で話さないでください……!」
 ロゼリアは両手の花をコピーロゼリアに向け、花の中心へ光を集中させていく。
 小さなため息をつき、コピーは呆れる仕草を見せた。
「無駄なことは止めた方がいい。ばかすかと遠距離で技を撃ち合ったところで、僕達の相性上、
互いに大して効果がありませんよ。的も小さいため、無駄弾も増える一方。それでは美しくない」
 ロゼリアは黙って両手を下ろす。集まっていた光は四散し、消えていった。
「では、どうしろと?」
 コピーロゼリアは得意げにほほ笑み、葉っぱを一枚、上に放り投げた。そして両花から鋭く長い針を伸ばすと、
宙を舞う葉をその切っ先で軽やかに数回撫で付ける。たちまち葉は空中分解し、ぱらぱらと乾いた音を立てて地に降り落ちた。
「これで急所を一突き。お得意ですか?」
「……受けて立ちましょう」



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