第32章


[08] 



 やはり悪い予感は当たっていた。
 ゴーリキーの常軌を逸した、狂気に蝕まれた目。体の末端は色素が抜け落ちたかのように白い。
 化け物の正体は奴――いや、奴ら、か。他にもまだ大勢、この洞窟には失敗作達が巣食っていることだろう。
 対するエーフィと呼ばれたポケモンは臆することなく座ったままゴーリキーと睨み合い、人間の指示を待っている。
 さて、加勢すべきか否か。まだ岩影にいる人間が、俺達にとって無害かどうかは判別できない。
「ここは少し様子を見るか」
「そうですね」
 俺達は高みの見物を決め込むことにした。どちらにせよ、奥に行くにはあの空間を避けては通れない。
どの程度やれるのか手並みを拝見させてもらおう。あわよくば漁夫の利を得ることもできるかもしれん。

 暫らくの睨み合いが続いた後、痺れを切らしたゴーリキーが筋肉で盛り上がった剛碗を振り上げ、
雄叫びを上げながらエーフィに向かっていく。
 見たところエーフィはエスパー。相性上はゴーリキーに有利だ。
だが、あの猛進を止めるのは相当難儀するだろう。
失敗作とはいえ、奴らの頑強さは屋敷で嫌というほど味わった。



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