第32章


[28] 



 吹き出された紅蓮の炎が意志を持ったように渦を巻き、レアコイルを呑み込む。
銀色をした三つの球体で構成された無機質な体は、不快な電子音の断末魔を上げて三角隊形を崩し、
遠心力で散り散りに吹き飛ばされていった。
「よくやった、リザードン。ピカチュウ君もナイスアシストだったよ」
 凶暴化したポケモン達の数度の襲撃をレッドと協力して退けながら、俺達は進み続けた。
俺はデルビルのやや後ろの位置につき常に監視も怠らなかったが、まだ不審な動きは見せない。

「さっきからジロジロ睨みやがって。何のつもりだ、このネズ公」
 視線に気付いたのか俺の方に振り向き、デルビルは声を荒げる。
 何気なく装い見張っていたつもりだが。こういう輩は変に視線に敏感で面倒だ。
「偶然だ。睨んだつもりもない。お前の姿など拝んだところで何の得もないだろう」
 興味がないように振る舞い、俺は言い放った。
「いっぱしの生意気な口聞きやがる。畜生のくせによ」
「我等とて心はあるのだ。お前が今までどのような態度でポケモンに接してきたか知らぬが、少しは思い知ったか」
 ぐ、と言葉を呑み込み、ばつが悪そうにデルビルは顔を背けた。
「ケッ、こんな姿もすぐにおさらばだ。てめえらの言葉がわかることも無くなる。――そろそろ目的地だぜ」

 洞窟の先に、場に不釣り合いな機械と円柱状の大きなカプセルの群れが並んでいる。
機械は様々な色のランプをチカチカと忙しなく輝かせ、透明なカプセルには不気味な薄緑の液体が満たされていた。
液に浮かんでいる物体の正体はここからでは分からない。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.