第32章
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見つかったか。
舌打ちし、俺は穴を飛び降りる。ミミロップ達も続いて降り立ってきた。
俺達の姿を見ると、黒い犬は更に恐怖に顔を歪め、声にならない声を上げながら後退りを始める。
「お前達は……く、来るんじゃねえ化け物! 俺のそばに近寄るなああーッ!」
「落ち着け。通じるか? 俺達は他の凶暴化した奴らとは違う」
黒い犬は耳をぴくりとさせ、動きを止めた。
「……人間の言葉じゃねえ。なのに何を言っているか理解できる……」
人の言葉を話すポケモン――厳しい訓練により人間の言葉を身につけた者もいると噂に聞いたことはある。
だが、この黒い犬は自分が元々はポケモンではないかのような言動をしている。
異様な光景ではあるが、前にもこのような者を見た覚えがあった。確か何といったか――。
「よっと」
軽い掛け声と共に、すたりと軽快に降り立つ音が響く。ようやくレッドが降りてきたようだ。
「うん、僕達は君に危害を加える気はない」
なだめるようにレッドは言った。
「人間だ! 助かった!」
黒い犬は俺達を押し退け、飛び付くようにレッドに寄っていく。
「おい、アンタ! 信じてくれ、俺は人間なんだ!」
「ああ、信じるよ。前にも機械のせいで同じような状態になった人を一度見たことがあるから。マサキさんっていうんだけど」
そうだ、マサキだ。ということはレッドも奴の家に行ったことがあるのだろうか。
マサキは遺伝子配合装置とやらでポケモンと融合したと言っていた。
その装置を開発したのはロケット団――グレン島で行われていた遺伝子の研究、生み出された恐ろしいポケモン――
俺の頭の中で様々なものが結び付いていき、一つの形をなそうとしていた。
全ての元凶はロケット団。奴らとの因縁は未だ深く牙を食い込ませ、毒を流し続けていた。
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