第32章


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 まったく、無茶をしてくれる。何が結果オーライだ。
 体についた砂埃を払いながら俺はレッドを睨み付ける。
 非難の視線を浴び、レッドは頬を人差し指でぽりぽり掻きながら苦笑いを浮かべた。
「あはは……君の自慢のマントを汚してしまったのは謝るよ。ごめんごめん、ちょっとさっきのは危なかった」
 はあ、とため息が漏れる。あまり悪びれていない様子の軽い態度に、何だか怒る気も失せてしまった。
元はと言えばムウマージの不手際だ。あまり強くも言えん。
「さあ、気を取り直していこう! こっちでいいのかな? わかった所まででいいから案内してもらえるかな」
 道の先を指差してレッドはムウマージに振り向く。こくりと頷き、ムウマージは先導を始めた。
「じゃあ、皆であの子についていこう。はぐれないようにね。フシギバナは最後尾の警護を頼むよ。
リザードンは最前列、あの子の横だ。爆発音を聞き付けた新手がいつ現れるかもわからない。気を引き締めて行かないとね」
 俺はフシギバナと共に最後尾につくことにした。
 レッドとアブソルは列の中央に置かれ、その右横をロゼリアが、左横をミミロップが固めるような隊列となって進んでいく。

 しばらく迷路のような道をぐねぐねと折れ曲がりながら進んできたが、幸いまだ敵に襲われる気配は無い。
「お前の主人はいつも先程のような無茶をしているのか?」
 間を持て余し、俺は横のフシギバナに声をかけた。
 いきなり声をかけられたためか、フシギバナはびくりと体を揺らす。同時に背の花が揺れ、がさりと音を立てた。
「……どうした? そこまで驚くこともあるまい」
 びくびくとした目でフシギバナは俺を見つめる。
「ぼ、僕を食べたって美味しくないよ。そんなに睨まないでよ」
「……別に獲って食うつもりは無い。目付きが悪いのは元々だ」
 こいつも何だか一癖ありそうだ。奴の手持ちには丁度良い性格をしたまともな者は居ないのか……?




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