第32章


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ゴローン達の速度は速く、どんどんと距離を縮めてくる。
「少しでも足止めを」
 走りながら、横でロゼリアが両花から毒々しい色をした撒き菱をばら撒いていく。
 菱を表面に食い込ませたゴローン達は転がるバランスを崩し速度を落としたが、
すぐにそれらは抜け落ち、再び回転数を増し勢いをつけ始めた。赤い点滅と膨張の間隔も短くなってきている。
 曲がり角に差し掛かると、レッドはホルダーからボールを一つ外した。
「追い付かれたらお仕舞いだ。だけど、カーブの近くに来れば奴らもスピードを緩めざるをえないはずさ」
 道を曲がりきり、レッドが先の方へ先程外したボールを放り投げる。中から飛び出したのは、
背中に大きな花を生やしている蛙のような大柄のポケモン――フシギバナだ。
「フシギバナ、こっちに向かって特訓した例のアレを思い切り放り投げろ! みんな、すぐに伏せてくれ」
 フシギバナは一瞬、戸惑う素振りを見せたが、花の中心から巨大な種子をこちらへ向けて射出した。
 レッドは片手で帽子を押さえながら、飛び込むように地面に伏せる。ただならぬ様子にすぐに俺達も続いた。
 種は煙を吹きながら俺達の頭上を越えていく。顔を上げ、行方を目で追うと、種はそのまま角に向かって飛んでいった。
ほぼ同時に、角からゴローン達が手足でブレーキをかけながら滑るようにして姿を現す。
 種は奴らの足元にからからと音を立てて虚しく転がり落ちた。吹き出していた煙も止み、何も起こらない。
 ……何だ? 失敗なのか?
 ゴローンの一匹が嘲笑うようにそれを踏み潰しかけた瞬間、種が息を吹き返したかのように大きく輝いた。
 危険を感じ、俺は頭を抱え込み地に顔を戻す。立て続けに響く三つの爆発音。
衝撃にマントが捲り上がり、激しく煽られる。地面にしがみ付き、吹き飛ばされぬよう耐えた。

 ――パラパラと砂利が降り注ぐ。立ちこめる砂煙に咳き込みながら、俺はゆっくり身を起こした。
 同じようにして、他の者達も起き上がってくる。
「げほ、ごほ――良かった、みんな無事のようだね」
 ゴローン達は跡形もなく吹き飛び、居たはずの場所は浅く地が抉れていた。
爆発で角にあった岩の一つが崩れ、その先にも岩の道が続いている。
「大変だったけど、結果オーライってところかな。おかげで近道ができそうだ」




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