第32章


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「待て。今、なんと言った。グリーンに勝ってチャンピオンになっただと?」
「なんだい、生意気なおチビさん。折角、俺とハニーが話しているところなのに割り込んでこないでくれたまえよ。
まあいい、隠す必要などない。そうさ。俺のマスター、レッドは今やポケモントレーナーの頂点!
泣く子も黙り、憧れるポケモンリーグのチャンピオンだ。
そして俺はそのポケモン。惚れなおしたかい、ハニー?」
「一度もあんたになんて惚れてないんだけど」
「つれないね。だが、それがいい」

 なんと……! では、カントー各地で何度も耳にした、我らポケモンのために尽力しているというチャンピオンは、
あの者――レッドだったというのか。
 あの真直ぐにポケモンを想う心は時の流れに捻曲がることなく、むしろ更に力強く成長していたのだ。
これ程……これ程――何と表せばいいのだろう、言葉が見つからない込み上げる熱い感情の渦に俺は飲み込まれる。
 奴には守るだけの価値がある。人間としてではない、レッドという個の存在としてその価値を見いだした。
決して飼い馴らされたわけではない。対等の立場として、受けた恩に報いる。それだけだ。
 すべてを終わらせた後、洞窟の外へレッドを無事に送り帰す。それが俺にできる精一杯の返礼。
その後も共に歩むことはできない。俺にも目指す道がある。

                    ・

「みんな、上がるに丁度よさそうな場所がある。そろそろ降りる準備をしてくれ」




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