第31章


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 刻々と崩壊へ向かう震える大地に立ち尽くし、誰一匹として口を開くものはいない。
 現状、運ぶことができるのはミミロップかアブソルのどちらか一匹。だが、どちらを助け、片方を見捨て
るかなど誰も選ぶ事はできなかった。
 地の震動音に遠く空から響く雷鳴似た音が加わる。音が響いてくる方角を見上げると、噴き出る煙の量
が一層増している火山が目に入った。
 最早、一刻の猶予も残されていない。しかし――俺には選べん。他の手段も見出だすことができない。
 絶望が立ち込め俺達を包み込もうとした時、一陣の風が吹き抜ける。
 上空を高い声で鳴きながら低空で旋回する大きな影。鳥ではない。コウモリのような翼、二本角の生えて
いるトカゲに似た頭部、風に揺れる長い尾――それは翼竜。
 研究所の通風口内で復元を待ちわびる中、盗み聞いた研究員達の話を思い出す。
琥珀の中に残っていた遺伝子は古代の翼竜プテラのものであると。
「奴を呼び止めろ! お前を甦らせてやったのは我らだと!」

                       ・

「するってえと何かい。おれっちは石ころになっちまってて、それをおめぇさん達が助けてくれたってのかい」
 ポッポ数羽がかりで何とか飛び回るプテラを呼び止めることができた。
 怪しむように降りてきたプテラに俺達は必死に説明した。
「にわかにゃ信じらんねえ話だが、よござんしょ。おれっちも白亜っ子の端くれでい。困ってる奴ぁ放っておけねえってもんだ」
 そして、どうにか協力をこぎつけることができた。
 俺達はピジョンの指示の下、手早く脱出の準備を始める。
 ムウマージがロゼリアを道具袋に詰め込み空に浮かび上がっていく。プテラはたった一匹でミミロップ
を乗せた籠を任されたが何とか持ち上げ、上昇していった。続いてポッポ五羽がアブソルを籠に乗せ飛ぶ。
 俺は傷ついたポッポを任された。ミミロル――現ミミロップを運んだ時に比べれば軽いものだと快諾する。
 風船とベルトを取り付け、ポッポを蔓で抱くように胴に固定し、徐々に浮かび上がっていこうとした時、違和感に気付く。
ピジョンがいつまでも飛び立とうとしないのだ。


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